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Re: 広報部の青春な日々 ( No.3 )
日時: 2013/04/09 16:45
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: eVCTiC43)

 02「私も手伝うよ」



こうして強制入部が決定し、俺と石田は入部届を書かされた。…てゆーかガチで部員になっちゃったよ…。順調にスタート出来ていた平穏な高校生活もここまでか…。

「顧問の東先生に入部届を出したら、今日はもう帰っていいわ」
「活動内容とかは明日話す」
「「はぁい…」」
指示…というより命令通りに、俺たちは部室を出て職員室に立ち寄り、東先生という男性職員に入部届を差し出した。

「おお、広報部に入部か!人数不足だったんだよねー。ありがとう」
三十代半ばだと言うこの先生は、広報部の他にバレー部の顧問も兼任していて、広報部に顔を出すことはほとんどないらしい。ちなみに教科は国語。

「去年は入部者がいなかったからどうなるかと思ったよ。それにしても、人気がないのに、毎年入部届を出すのは早いんだよなぁ…」
先生それは強制入部させられるからです…とは言えなかった。言ったら鬼が待っている…ガクガクブルブル。

大きく溜め息を吐きながら、俺たちは校舎から出た。
「なんか大変なことになっちゃったよ…」
「ああ…しかもよりによってオレたち…」
ふらふらと駐輪場へ向かう。辰巳市民である俺も石田も自転車通学だ。

自転車に跨がらず、押しながら校門を出る。
「まあ、過ぎてしまったことだから仕方ないか…。とりあえずよろしく、石田」
「こちらこそよろしく。えっと、名前で呼んでいい?」
「ああ、いいよ。じゃあ俺も名前で呼ぶわ、ユイト」
「じゃあキョウ、改めてよろしく」
石田…ユイトは爽やかな笑顔を見せて、自転車に跨がった。


自転車を五分くらい漕いだところでルイマと別れ、二十分ほどである一軒家の前に着いた。自宅ではない。叔父夫婦の家だ。
俺が中一の時から、父の弟…つまり俺の叔父の家で、小学二年生の弟、陸(リク)を、俺が帰って来るまで預かってもらっているのだ。

父と母は俺が九歳のときに離婚した。離婚の理由は母の浮気らしい。
母は俺とリクを引き取らなかった。そのため、父が男手一つで俺たちを育ててくれた。
父は養護施設に泊まり込みで働いている。帰って来るのは一年に五回くらい。そのため、俺が家事をしなければならないのだ。

中学生の時と同じように、その家のチャイムを鳴らす。すると間もなく、叔父の奥さんが出てきた。
「あら、キョウ君!お帰りなさい」
「ご無沙汰してます。リクいますか?」

尋ねた直後、リクが家の中から飛び出てきた。
「おかえりっ、お兄ちゃん!」
無邪気に抱きつくリク。
「ただいま、リク。…今日もありがとうございました」
「最近は物騒なことが多いから気をつけてね」
「はい、では失礼します」
奥さんに頭を下げ、自転車を押しながらリクと歩き出した。

「リク、新しいクラスは楽しいか?」
リクはにこにこしながらうなずく。
「うん、たのしいよ!お兄ちゃんは学校どう?」
「あっ、ああ、えーと…楽しいよ、うん」
まさか「変な部活に入っちゃったよ(ニコッ)」とは言えない。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
…はっ、どんよりした顔を見せてしまった。
「ああああいや何ともないぞ!そ、そうだ、帰ったらすぐに夕飯作るからな!」
「ボクも手伝うー!」
「そうか、リクはいい子だなぁ、あはは…」

どうにか誤魔化せた…と安堵したそのとき、後ろから声がした。

「私も手伝うよ!」

振り向くと、そこには俺の一歳年下の幼なじみであるメグミ…四ツ橋恵が立っていた。
「メグミ!いつからそこにいたんだよ!?」
「あー!メグミお姉ちゃんー!」
リクがメグミに駆け寄る。メグミは中学の制服を着ている。学校帰りなのだろう。

「今さっき見つけたんだぁ。それよりキョウ君、今日のメニューはなに?」
「えっと、豚肉の生姜焼きと…って、今日も手伝ってくれるのか?」
「もちろん!ママからも言われてるし!」

近所に住むメグミは、よく家事を手伝ってくれるのだ。料理は上手いし手先が器用なので、俺にとってはとてもありがたい。
しかも楽しそうにこなしてくれる。将来はいい主婦になりそうだ。

「わぁい、またメグミお姉ちゃん来てくれるんだ!」
リクがはしゃぐ。メグミは子どもが大好きであるため、リクもメグミになついている。

と、そのとき、再び聞き覚えのある声がした。
「メグ〜!部活のプリント渡してなかったぁ〜!」
メグミの後ろから、耳のあたりで髪をツインテールに縛っている中学生が走ってきた。

この中学生はメグミの親友のミレイ…葉鹿美玲だ。メグミとは近しい俺とも知り合いである。
メグミとはかなり仲がよく、部活も同じ合唱部で、明るく社交的な性格も一緒。そして二人とも運動オンチだが頭がいい。
しかし、ミレイはメグミ以上に秀才で、かなりの雑学王らしい。

「ミレイ!わざわざありがと〜!」
メグミのもとへ駆けつけたところで、ミレイは俺とリクの存在に気付いたらしい。

「あ、キョウ先輩!お久しぶりです!この子は…もしかしてキョウ先輩の弟さん!?」
「久しぶり、ミレイ。そっか、初対面だったか。俺の弟のリクだ」
「はじめまして、市川陸です!」
「わぁ、いい子ですね!わたしは葉鹿美玲!よろしくね!」
ミレイはリクの頭を撫で、そうそう、と言って通学鞄からプリントを取り出し、メグミに渡した。

「ありがとミレイ!…あれ?今日ってミレイが見たがっていたアニメの再放送日じゃなかった?」
ミレイは少しぽかんとしていたが、やがて慌て始めた。
「あああそうだった!キョウ先輩、今何時ですか!?」

俺はポケットからケータイを出して時計を見る。
「五時十五分だ」
「わあ!あと十五分しかない!じゃあわたしこれで失礼します!じゃあねメグ!」
「プリントありがとねー!」
相変わらず天然なミレイは、大急ぎで走って行った。

「さて、俺たちも行くか」
「そうだね。さ、おうちへ帰ろ!」
「帰ろー!」
「っておい、走るのかよ!」

俺たちも、ここから徒歩約五分の家へ向かって走り出した。