コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 広報部の青春な日々 ( No.5 )
日時: 2013/04/09 16:33
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: eVCTiC43)

 03「作業を始めるぞ」



 翌日の放課後、俺とユイトはちゃんと広報部の部室に来ていた。
「お前たち、よく来たなあ…」
 部室には副部長であるトモ先輩だけが来ていた。
「来ないとひどい目に遭いそうですからね…」
 苦笑いするトモ先輩。

 ちょうどそのとき、部長のメイ先輩が来た。
「ごめーん、遅れちゃったぁ。おっ、二人ともちゃんと来たわね。感心感心」
 パイプ椅子に座るメイ先輩。男子三人もきのうと同じ席につく。

「じゃあ、広報部について説明しようか」
 トモ先輩がホワイトボードを指さす。そこには、おおまかな内容がすでに書かれてあった。
「あれに沿って話すぞ」


 広報部は、主に三つの活動をする。

 一つ目は、月に一回「辰巳タイムス」という広報を作ること。今月の出来事やお知らせなどをまとめ、PTA会誌と同じような形状で発行するらしい。パソコンを使って制作するとのこと。

 二つ目は、校内外に配る宣伝紙の制作をすること。こちらもパソコンで作るらしい。

 三つ目は、学校外での宣伝紙の配布・ポスター貼り。どう考えても広報部のやることではないが、歴代の部員がその仕事を自主的に引き受けてから、広報部の仕事となってしまったとのこと。

 活動日は月曜から金曜の放課後。作業が間に合わないときは土日も行う。逆に制作物がないときは、平日でも休みをいれる。


 先輩は以上のことを説明した。
「ちなみに、配布は基本土日に行うわ。配布の依頼は…夏と冬はホント多いから、覚悟しておいてね」
「「はーい」」
 でも、それほど大変な作業じゃなさそうだ。

「そういえば、去年は入部者がいなかったって聞きましたけど、なんで強制入部させなかったんですか?」
 ユイトの質問にトモ先輩が答える。
「去年の部員はおれとメイと三年の先輩三人だったんだけど、三人とも二年の時点で大学は推薦入学って決めていたから、卒業ギリギリまで制作を手伝ってくれたんだ。だから、今年はいれないで来年入れればいいや…ってことになったんだ」

 ふむふむ、とうなずきながら、俺はあることに気付いた。
「じゃあ、今年の場合はどうなんですか?メイ先輩もトモ先輩も、もう推薦って決めているんですか?」
「そう、それなのよ」
 メイ先輩が苦笑いを浮かべる。もしかして…

「あたしもトモも推薦で行く気はないわ。去年はそのことをすっかり忘れていたのよね…」
「つまり…ほとんどの三年生が引退する夏場からは、俺とユイトだけで活動するってことですか?」
「ああ…すまない」
「そうなの…ごめんね」
「じゃあ、また誰かを強制入部させる…わけにはいかないですよね…」

 ユイトと顔を見合わす。
『今年の夏秋冬は燃え尽きようぜ…』
 ユイトはそう言って笑っているように見える。

『そうだな…』
 俺も笑いかえした。

「誰か入部してくれればいいんだが…希望して入った生徒はいないからな、この部活」
 うーん、とメイ先輩が腕を組む。

「広報は無理でも、校外での配布、ポスター貼りだけでも手伝ってくれる人がいれば…たとえこの学校の生徒じゃなくても…」
 それを聞いて、俺はある二人の顔を思い浮かべていた。
 あの二人なら手伝ってくれ…だめだ、今年はあいつらも受験だ。

 重たい沈黙。…それを打ち破るかのように、ユイトが明るい声を出した。
「まあ、今はまだ大丈夫でしょう!その時になったらまた考えればいいじゃないですか!」
 どうやら、ユイトは気遣いのできる人間のようだ。

 俺も口をはさむ。
「そうですよ。もし解決できなかったとしても、俺たち二人でなんとかしますよ」

 先輩たちがほっとしたように微笑む。
「ありがと、二人とも」
「おれたちもここに来れるときは来るようにするからな」

 さて、とトモ先輩が立ち上がる。
「作業を始めるぞ。頼まれた宣伝紙がまだ未完成だ。キョウとユイトにも手伝ってもらうからな」
 そう言って、先輩は作りかけの宣伝紙を棚から取り出した。