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Re: 広報部の青春な日々 ( No.9 )
日時: 2013/04/10 21:50
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 7foclzLM)  

05「こっそり入ってきちゃいましたぁ!」



入部してから一週間が経った。
先輩から制作の仕方などを教わった俺たちは、早速広報作りに取りかかっていた。

辰巳タイムスは毎月最終日に配布をしている(終業式がある月はその日)
。配布のおよそ約三週間前から前の広報を作り終えてからの出来事をまとめ始めるのだ。
また、顧問の東先生をはじめとする教員たちが写真を提供してくれるので、それをパソコンに取り込み、記事に添付する作業も行っている。

配布日の五日前に編集を締め切り、ミスがないかチェックする。
そして記事を印刷し、綴じ込みをして完成だ。

今日は四月十八日。締め切りの約二週間前だ。
ちなみに、今部室にいるのは俺とユイトの二人だけ。三年生は今日、進路関係の行事があるため、遅れて来るそうだ。

部室に二つあるうちの片方のデスクトップパソコンをいじりながら、ユイトが呟く。
「やっぱり、誰も入部してこないなぁ…」

俺はメイ先輩が今月の出来事をまとめた紙を見ながら返す。
「広報部って、何か堅苦しいイメージがあるんじゃないかな?」
「あー、『取締役』みたいな?」
「そうそう」
確かに、とユイトがうなずく。と、その時、

コンコンコン

部室のドアがノックされた。
「ん、誰だ?」
二人して首をかしげる。トモ先輩とメイ先輩がノックするとは思えない。
「まあいいや。どうぞー」
すると、ドアが勢いよく開いた。

「こんにちはー!!」
「見学させてくださーい!!」

現れたのは、元気のよい二人の女子。辰巳市にある中学校の制服を着ている。
それを見て…俺は唖然とした。

「め…メグミ!?それにミレイ!?」

そう、俺の幼馴染みとその親友だった。
「お、お前らどうしてここに!?」
「え?キョウの知り合い?」
ユイトは一人ぽかんとしている。

「初めまして!キョウ君の幼馴染みの四ツ橋恵です!」
「メグの親友の葉鹿美玲です!」
「って待て待て!」

俺は二人に問い詰める。
「二人とも何でここに来たんだよ!?どうやって入ってきたの!?あと部活は!?」
「まあまあ、これには色々とワケがあるんだよ」
メグミのその言葉に、何故だか深い意味があるように思えた。

「えっと…キョウの幼馴染みと知り合いが、何の前触れもなく、いきなり広報部の部室に来たってことでいいのかな?」
頭にハテナマークを浮かべているユイトにうなずく。
「ああ、そういうことだ。…とりあえず話を聞かせてもらおうか」
メグミとミレイに席をすすめた。

「じゃあ、一つ一つ説明するね」
トモ先輩の席に座ったメグミがきりだす。

「今日の部活はお休みって決まってたんだ。で、暇だからどうしようかと思っていたら、キョウ君のことを思い出してね」
その言葉に、俺ははっとした。
「キョウ君、部活に入ってから悩んでいたからさ。その原因をつきとめるために来たんだよ」

ああ…やっぱり嘘ばれてていたんだ。これだからメグミには敵わない。
「わたしはメグについてきました!何だか楽しそうだったから」

そこで、ユイトが口を挟んだ。
「そういえば、どうやって高校に入ってきたの?」
教員に見学要請したのかな?なんて思っていると、当の本人たちはこう答えた。

「潜入です!」
「こっそり入ってきちゃいましたぁ!」

「「ええええええええっ!?」」

受験の年だというのに何やってんだ、こいつらは!?
「こ、これまた度胸があるんだね…」
ユイトも苦笑いしている。

「事前に調べておいたんです。辰巳高校の西校舎に防犯カメラがあるか。そしたら一つもないことが判明したので、非常用階段から登ってきたんです」
出た、メグミの情報収集力!これには毎度驚いてしまう。
「おお…さすがメグミ」

ユイトも感心していた。
「へぇ、すげー!どうやって情報手に入れてんの?パソコンとか?」
「はい、私、パソコンいじりが好きなんで!ワープロとかも得意ですよ」
「じゃあ、広報部に入ってくれたら心強いだろうな〜」
その言葉で、俺は悩み事を思い出した。

嘘をついているのは…隠し事をしているのはもう嫌だ。

俺は意を決して、口を開いた。
「メグミ…言うよ、俺の悩み事」
メグミは俺を見て、しっかりうなずいた。

広報部の現状、夏場からは人手不足になること、手伝ってくれる人がいたらと思ったこと、そこでメグミとミレイのことが思い浮かんだが二人は受験があるから駄目であろうことを話した。

「でも、二人に手伝ってもらいたい気は捨てられないんだ。お前らがいれば、その場が明るくなるからな。だけど受験があるし…」
ユイトもうなずく。
「二人なら明るく手伝ってくれそうな気がするよ。でも受験があるのか…」

と、その時、メグミが口を開いた。
「なんだ、そんなことかぁ。その仕事、引き受けさせてもらうよ!」
「「…え?」」
ミレイも立ち上がって言う。
「わたしも手伝わせてもらいます!」
二人は明るく微笑んでいる。

「で、でも受験が…」
俺の言葉はそこで遮られた。
「キョウ先輩、わたしたちの学力をなめないでくださいよ。わたしもメグも、偏差値六十七以上はありますから!」
「第一志望であるこの学校の合格率は安全圏だからね!」

…はい?
「おぉすげー!頭いいんだ!」
感心しているユイトはおいておくことにする。

「だけど油断は禁物だし…」
またも遮られた。
「まあそうだけど、四六時中勉強するわけにはいかないし、気分転換に手伝うのもいいじゃん!」
「気分転換かぁ!いいね!」

俺は悩み悩み…改めて尋ねた。
「…手伝ってくれるのか?」

二人は声を揃えて言った。
「「もちろん!」」

その返事を聴いて、俺は自然と微笑んでいた。
この二人は結構凄い奴等だ。
…だから、いつでも信用していなくちゃな。

「決定だな!オレはキョウと同じクラスの石田結人だ。よろしく!」
「よろしくお願いしますユイト先輩!」
「わたしたちのことは名前で呼んでくださいね!」
「おっけー、メグミとミレイだな」
二人は早速ユイトと仲良くなっていた。

今日、広報部に元気な助っ人が誕生したのだった。