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Re: 宮廷物語? ( No.10 )
日時: 2013/05/17 22:43
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第一章 *1*

 今日も一日が終わった。

 孤児院の奥の角の部屋が私の部屋。ベッドと机、タンスを置くだけで場所がうまってしまうくらい狭い部屋だ。それでも、私はこの部屋が気に入っている。
 扉に季節の花で作ったリースを飾ったり、壁に写真を飾ったりして、ちょっとした秘密基地みたい。

 私は、ベッドに座っている。

「はぁ。今日も疲れた」

 なんとなく、独り言を言ってみた。

「お疲れ様です」

 なんだか、聞いていて落ち着く声だな。と思いながら、ぼーっと返事をした。

「いぇいぇ」

 ——誰?

 この部屋には私しか居ないはず。声は私の左側、つまり窓の方から聞こえてきた気がするけど。
 頭がぼーっとしてるし、気のせいか。
 うん。眠いんだよね、私。もう寝よう。

 私はベッドに寝転がり、布団を頭からかぶった。

「カナエ様?」

 ——誰?

 私はガバッと起き上がり、窓の方を凝視した。
 窓に腰掛けているのは、スーツを着た黒髪でいい感じに筋肉のついていそうな、事務的な表情をした男の子。
 気のせいではなかった。
 っていうか、不審者っ!? やだっ!

「だっ、誰!?」

 私は、夜中にもかかわらず大きな声を出していた。

「しーっ! みんなが起きてしまいます!」

 その男の子は、口に人差し指を当てて言った。
 私が黙ったままでいると、不審者?は今までの事務的な表情から、一人の普通の少年の表情になり、悲しそうな顔をした。

「——俺のこと覚えてない?」

 あまりにも悲しそうな顔をしていて、さすがに不審者とは思えなくなったので、記憶をたどる。
 黒髪で私と同じくらいの歳のがっしりした男の子なんて、お世話さんにも……

 あっ。まさか、そんなわけ——

「幼なじみの執事を忘れたとは言わせないよ」

 ——あった。

「ルト? なんでルトがここに?」

 信じられない。私はルトであろう人の手を取り、引っ張って立たせた。
 彼は驚いていたけど、そんなの構わない。

「本当にルト? そんなに背高くなかったよね?」

 そう。身長が知りたかった。

 ルトは、私の執事兼幼なじみだ。だけど、同い年の為私の世話はルトのお母さんと私のお母様がしてくださっていた。
 ルトは、私より背が低くて、泣き虫の男の子だった。
 今は、別人のようにたくましくなっている。私より、頭一つ分背が高い。

「カナエ、俺が『カナエを守る為に強くなってくる!』って言ったの覚えてる?」

 ルトだ。
 泣き虫だった彼が私を守るって言ってくれた事、忘れる訳ない。

「もちろん」

 私がそういうと、ルトはにっこりと笑った。
 ルトは私達が孤児院にあずけられる時に、その言葉を言った。
 そして、ルトは両親にも行き先を告げず、修行してきます。という手紙を残して消えてしまった。まだ、11歳だったのに。

 そして、ルトはゆっくりと口を開いた。

「約束、守ったよ」