コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 宮廷物語? ( No.11 )
- 日時: 2013/05/17 22:46
- 名前: 音 (ID: HFyTdTQr)
ルト *1*
俺は、カナエの幼なじみ兼執事だった。
だけど、あり得ないくらい泣き虫で、カナエや年下のカエにまで、迷惑をかけていた。
それでも、楽しく暮らしていた。
カナエ達のお父様が亡くなって、新しいカナエ達の父親が来た。
その人は、カナエ達に暴力をふるった。
カナエは、カエとカコを守っていた。
そして、カエもカコとカナエを守っていた。
俺は、その時も『怖い』と言って、両親にくっついていた。
ある日、俺は、カナエとカエが喧嘩をしているところを初めて見た。
そして、カナエが怒鳴るところも初めて聞いた。
『姉様は、あいつにあんなことされてなんとも思わないのかよ?』
手を強く握って、怒りを抑えているカエ。その手は震えている。
『あいつなんて言ったら駄目。レスタ様にも何か事情があるんだよ』
カナエはニコニコと、朗らかに笑っている。いつも通り、に見える。
『カナエはいつもそればっかりだ! 私が二人を守るから。とか、私なら大丈夫とか、レスタ様も辛いんだとか!
大丈夫な訳ないだろ! 俺は男だから、女の子を守ってあげなきゃいけないよってお父様が言ってた! 実際、俺よりカナエの方が弱いんだから。なのに、なのに、お母様がかわいそうだっ!』
カエは、遂に怒りが爆発したみたいで、怒鳴りはじめた。最後の方は泣きそうだ。
俺は、それを見ても止めに行く勇気が出なかった。
『カエ、なんでお母様がかわいそうなの?』
カナエはキョトンとしている。
『あんな奴っ——』
カエは一瞬、どう表現すればいいか迷ったように、目を泳がせた。
『最低だ!』
最低。という言葉を今までで一番大きく叫んだカエ。
『ちゃんと、質問に、答えて。カエは、レスタ、様の、表情、よく、見たことある……?』
やばい。と思った。カナエが途切れ途切れ話す時は、キレる直前なのだ。いつもは、そこで皆でなだめていたから、カナエのキレた様子を見たことがない。
ただ、今回は喧嘩だ。カエがなだめる訳がない。
『見る訳ないだろ! あいつの顔なんて!』
『カエ、黙って……』
ここは、俺が止めに行くべきだと思った。だけど、臆病な俺は、カエにあんな風に怒鳴られたら嫌だ。とか、カナエにも怒られるかもしれない。嫌だ。とか、くだらない理由でその場から動けなかった——違う。動かなかった。
『はあ? なんでだまんなきゃいけないんだよ!? あいつなんて——』
『黙れって言ってんでしょっ! レスタ様はお母様のこと、本当に好きなんだよ!? 見ててわかんないの!? お母様には絶対に暴力をふるわないでしょ? それに、レスタ様はいつもかなしそうな顔してる! 本当は私も痛いけど、お母様は痛くないからいい……』
カナエは、カエの言葉を遮って一気にまくし立てた。
『意味わかんねぇよ!』
今思うとかなり幼い発言で、はっきり言うと俺もあまり意味が分からない。だけど、いつも静かでニコニコしているカナエが、自分の思いを人に話すことは少なかったから、カエも言い返せなかったんだと思う。
カエは部屋を飛び出して行った。