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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.110 )
日時: 2013/05/29 20:17
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第四章 *1*

 ——私は今、怒られています。

「気付かれないとでも思いましたか?」

 部屋を歩き回りながら言うモーリスさん。

「……はい」
「そんな訳ないでしょう!」

 静かだからこそ怖い、モーリスさんのお説教。

「すいませんでした」

 こういう時は素直に謝った方が良いんだよね。

「夜中に抜け出すなんて……。今回は私しか気付かなかったので、一日中音楽室に閉じ込めるという罰で済ませておきます。が、今後、こんな事がないようになさってくださいよ」

 ——それ、罰なの?

「はい」

 ちりひとつない綺麗な廊下をルトと音楽室に向かう。

「ばれちゃったな」
「なんでだろうね?」
「さあ? じゃあ、音楽室についたから今日一日頑張れ!」
「ん? 何を? 音楽室に閉じ込められるなんて、全然苦痛じゃないんだけど?」

 多分、来たばかりということもあって、手加減されている罰なのだろう。

 それにしても、私には苦痛どころか気分転換になるような罰だな。

「うん、まあ頑張れ」

 まあ、それもそうだよな。みたいな表情で軽ーく受け流された?


「うわぁーっ!」

 音楽室は、天井が高くかなり広い。
 入って左側の壁は一面ガラス張りになっていて、綺麗に手入れされた庭園が見える。

「ん?」

 庭園の真ん中には机と椅子があり、そこにはルトが座って優雅にお茶を飲んでいた。ティーセットはあともう一つ用意されていた。

「何やって——? 誰か来るのかな?」

 ルトが、私が見ていることに気が付いたみたいで、手を振っている。
 こっちに歩いて来て、紙を取り出した。

「監視? 後でショーン君も来るよ? 早く練習しな? じゃあ?」

 紙に書かれていることをそのまま読んでみた。
 私の口の動きで見たことを確認したのか、ルトは頷いて戻って行った。

 なんだったんだと思いながらまた、扉の前に立って部屋を見回してみた。

 左側は段差があって、その上にピアノが二台あり、椅子と机がいくつかあった。
 正面には本棚があり、沢山の楽譜があった。
 右側には棚があり、色んな楽器が2〜3台ずつ置いてあった。

「てっ! 天国っ!」

 私はそうつぶやいて、ピアノに向かった。

 ポ〜ンポ〜ン

「うぅ、指がまわらない。よしっ!歌ならっ!」

 ン〜ん〜ララ〜

「まだ、ましかな?」

 うう。ピアノも歌も特訓しないと……。
 でもまずは一通り試さないと。楽譜見てみようかな。

 ショパンにモーツァルト、バッハと有名な作曲家の曲から、聞いたこともないような人の曲まで——

 なんでもあるねっ!

 うーん。王子様達はどんな曲がいいかな?

 あぁ、でもまず私が出来ないと……

 その後、クラリネット、トランペットをはじめとする管楽器や、ヴァイオリンなどの弦楽器、シロフォンなどの打楽器を一通り演奏してみた、けど……

「わぁーっ! どうしようっ! 全然駄目っ!」

 思わず叫んでしまうくらいの出来だった。
 これじゃあとてもじゃないけど人に教えることなんて出来ないよー。落ち込むなぁ……

「カナエ様、よろしいでしょうか?」

 誰だろ?

「はい、どうぞ」