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Re: 宮廷物語? ( No.13 )
日時: 2013/05/17 22:49
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

ルト *2*

 俺は呆然としていた。

 カエとカナエは、普段全く喧嘩をしない。とても仲が良い。
 なのに、喧嘩をしていた。

 そのことにも驚いていた。だけど、カナエが怒鳴るのを聞いたことが一番驚いた。

 そして、自分を恨んだ。

 主人を守るのが、執事の役目だ。
 なのに、守るどころか両親にくっついて、怯えていただけだった。
 その結果、カナエやカエを追い詰めてしまった。
 悪いのは、レスタ様だけじゃない。自分も悪いと思った。

 まだ朝早く、外はとても暗かった。雨もザーザーと降っていた。

『……ぅ、うっ、うぅ……』

 その暗い中、カナエが泣いていた。

 今までカナエは、幸せそうな表情しかしてないというくらい、ニコニコしていた。
 その彼女が泣いていた。

『カナエ様』
『ふぇ?』

 カナエがこっちを向いた。さっきまで泣いていたのに、今は泣きそうな顔で笑っている。

 自分が、執事という役目を果たさなかったから——

 俺がもっと強かったら——

 泣き虫じゃなかったら——

『喧嘩しちゃった』

 普段に比べて、明る過ぎる様子で話し出したカナエ。

『うん』

 なんて声をかければいいか分からなかった。

『私、もう泣かない』

 カナエは決意したように無理して笑いながら言う。

 でも、

『カナエ様』

 それでも——

『私はもっと強く——』
『カナエ! ごめん。俺がもっと強かったら』

 ——そう。俺が強くなきゃいけなかったんだ。

 俺はカナエのだんだん涙声になっている言葉を遮って、ギュッと抱きしめた。
 強がるカナエを見るのが辛かった。自分のせいだということをさらに強く思った。

『カナエは強がんなくていいから。今だけでも、甘えて。誰かに頼って』

 それしか言えなかった。俺に頼って。なんて言いたくても言えない。

『ぅ。ぅ、ぅわあ!』

 俺はこの時、決めた。

『聞いて。俺、カナエを守る為に強くなってくる! だから、強がんないで』

 もう、カナエを泣かせない。と。

『う、ん』


その日、カナエ達は孤児院に行くことになった。