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- Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.134 )
- 日時: 2013/06/14 22:36
- 名前: 音 (ID: HFyTdTQr)
第四章 *3*
「カナエ様はそんな方じゃありませんッ! 勝手なこと言わないでくださいッ! 用事なら後でお聞きするので今は出て行ってください!」
——エミリちゃんが怒鳴ってる。
思わずこう思ってしまった。
いつも必要以上に謙遜しているエミリちゃんが怒鳴るなんて想像もしてなかったから。
怒鳴られた女の子は、目に見えて不機嫌になった。
「チッ、メイドのくせに」
こう言い残して去っていった。
「す、すいません……」
しばらくして、エミリちゃんに謝られた。
「なんで?」
理由が分からない為、そう言うしかなかった。
「わ、私、変なことを口走ってしまいました」
相当へこんでいる様子のエミリちゃん。
なんだか私まで、悪いことしちゃったな。という気持ちになった。
「大丈夫だよー? そうだ! エミリちゃん、楽器の練習してみない?」
あのままだと少し暗い雰囲気だったので、話題を変えてみた。
「え、わ、私なんかが楽器なんて——」
「今、私なんかって言った……?」
——私なんか
エミリちゃんはよくこう言う。
でも、エミリちゃんに「私なんか」って言葉が似合わないと思ってやめさせようっていうのは、私の勝手だって分かってるけど、スイッチが入ってしまって余計な事まで喋っちゃう。
自分でコントロールできるようにしなくちゃ……
「あ、ごめん」
色々考えていたおかげか、いらない説教を始めずにすんだ。
「い、いえ。あの、が、楽器を教えてくださいますか……?」
「え? いいの!?」
私がエミリちゃんの楽器の練習を見てあげることで、王子達に教える時にかなりやりやすくなる。
いってみれば、練習台……。
「あの、わ、わたし、前から音楽に興味がすごくあったんですけど、わたしなんかって言って諦めてました」
エミリちゃんは私の目をじっと見つめながら真剣に話してくれている。
「でもカナエ様に会ってから、わたしでも出来るかな? って思うようになったんです」
そう言って笑うエミリちゃんはとても輝いて見えた。
「わたしに楽器を教えてください!」
そんなに丁寧に頼まなくても……ってくらい丁寧にお願いしてくれた。
「私で良ければ」