コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.155 )
日時: 2013/07/06 17:09
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

〜参照500記念番外編〜
♪カナエ×ルト Ⅰ

「はぁーい、着いた。んじゃ、アタシは他の用事があるから行くわねぇ。ふ・た・り・で仲良くねぇ」

 私は、目隠しをされたまま何処かわからない所に連れてこられた。
 「ふたりで」ってことは、私一人じゃないってこと?
 良かった! でも、誰だろう?
 あの女の人……? の、妙に含みのある言い方が気にな——

「いつまでそれつけてんだよ……」
「ルト!?」

 目隠しをとると、そこは薄暗くて狭い個室だった。
 私が座っているのはソファーで、目の前には大きめな机があり、その向こう側にはまたまた大きなテレビ。

 ……ん? テレビなんて言葉、どこから思いついたんだろう……?

 まあ、いいや。

「おーい! 起きてる?」

 ルトが私の目の前で手を振っている。
 それを見て、自分がぼーっとしていたことに気がついた。

「ぇ、あっ、うん。 ……ここって——」
「ああ。俺もよく知らないけど、『カラオケ』っていうのが出来る場所らしい」

 ルトは、シャツの袖のボタンをいじっている。昔から変わっていない、困っているときの癖。

「ルトもあの人に連れてこられたの?」
「あの、長身でがっしりしてて茶髪でロングヘアーの男?」

 そうそう——って!

「やっぱり男の人だったんだ!」
「ぱっと見わかんないよな」
「うん」
「…………」

 ……あれ? おかしいな。
 いつもなら会話は途切れないのに。っていうか、ルトが話題を振ってくれるのに——なんか、静か。

 しかも、目を合わせてくれない。まず、こっちを見てない。

 私、何かしたっけ?

「ル、ルト……?」
「っ! 何?」

 呼びかけてみたけど、やっぱり目を合わせてくれない。
 何か話さなきゃ。うーんと……。

「『カラオケ』って何が出来るの?」
「そうだな——」

 ルトが説明してくれたところによると、このちっちゃい機械に歌いたい曲を入力すると曲が流れて、歌手のように歌える仕組みみたい。

「なんか歌えば?」

 ルトにそう急かされて、私は三曲予約した。

「何これ……」

 三曲歌い終わったけど。

「楽しいっ!」

 マイクに向かって声を出すと凄く響いて、歌っていて気持ちがいい。

「はぁーーーー」

 大きなため息が聞こえた。

「俺ばっか緊張してバカみたい」

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.156 )
日時: 2013/07/07 09:53
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

〜参照500記念番外編〜
♪カナエ×ルト Ⅱ

「ん? なんか言った?」

 聞こえなかった……。

「なんでもない。それよりさ」

 私が尋ねるとルトは顔をあげて、私の目をきちんと見て、話しはじめてくれた。

 さっき言ってたことは気になるけど、大事なことでもなさそうだしいいか。

「カナエって切ない曲が好きなんだ」

 切ない曲……。
 確かに、今歌った曲は失恋した時の気持ちを表現した曲だったり、好きなのに伝えられない・伝えたくないっていう曲だったりしたけど。

「うーん。わかんないな」
「わかんない?」

 私が応えると、ルトは眉をひそめてこちらをうかがっている。もっと詳しく話せってことだよね。

「うん。好きとかって訳じゃないんだけどなんか心に残るっていうか……。もちろん、凄い好きな曲もあるけどね!」
「ふーん」

 ルトはわかったようなわかってないような、複雑な表情になっている。

「つまり、共感出来るってこと?」
「え?」

 思ってもいなかったことを言われて驚いた。
 切ない曲に共感出来る?

「カナエもそんな想いしたりすんの?」

 ルトはいつになく真剣だ。それに、ボタンをいじっているから、困ってもいるみたい。
 ここはとにかく、真剣に答えなきゃ。

「まだ、そんな風に感じたことはないかな。でも、そう想うこともあるのかもね」

 私は、言葉を選びながら言った。

 ちょっと思ったんだけど、恋愛の話なら私にしない方がいいよね。こんな風に曖昧にしか答えられないから。

「ルトはあるの?」

 聞いてきたんだから、ルトにはそういう想いがあるのかも。

 ——そう、軽い気持ちで聞いただけだったのに。

「あるよ」

 ルトは短く答えて——

「きゃっ……!」