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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.161 )
日時: 2013/07/16 19:26
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

〜参照500記念番外編〜
♪カナエ×ルト Ⅲ

 なんと、私を押し倒した。

 な、何が起こってるの……?

 押し倒された衝動で閉じてしまった目を開く。

「っ!」

 目の前にはルトの顔。思わず目をそらしてしまう。
 近いよ……。

「今だって……」

 ルトの声は震えている。切ない曲をとても感情を込めて歌っている歌手のように。

「カナエは俺の事なんて見てないだろ。それに、執事と主人。俺達は立場が違うんだよな」

 最後のセリフは、ルトが自分に言っているように聞こえた。

「あ、の……。ルト?」

 今の状況を頭で対処しきれない。

 一つずつ整理していこう。
 えっと……私が仰向けに寝ていて、ルトがその上に乗っている——っていうのかな?
 うん。押し倒されてるんだよね。

 一つずつ整理していくって言っても、これしか分からないよ……。

「…………」
「ルト?」

 気が付くと、ルトが私のことをじーっと見ていた。

「…………」
「どうしたの?」

 さすがに、何も言ってくれないと色々な意味で不安になってくる。
 穴があくほど見られてる。本当に。

「やめた」

 ルトはそう呟いて私の上から退き、机に頬杖をついた。

「え?」

 またまた突然の出来事に思考がついていけない。
 それに、やめたってどういうことだろう?

「何でもない」
「本当に?」

 ルトの目がどこか遠くを見ているように思ったから、思わず「本当に?」と念押ししてしまった。

 私が一人であれこれ考えていると、ルトが突然こっちを向いて近づいてきた。

「……君がもっと俺のことを見てくれるように頑張るから、楽しみにしてて」

 いつもより低く、甘いルトの声が耳のすぐそばで聞こえる。

「っ!」

 今度は何なの!? しかも、不意打ちじゃないですかっ!?
 か、顔が熱い。真っ赤だろうな、私。
 恥ずかしい……っ!

「冗談だよ」

 私が赤いのに気が付いたのか、ルトは笑いながら言った。

「俺が普段カナエのこと『君』って言ったりしないだろ」

 そういうルトの顔も真っ赤。また、目を合わせてくれなくなった。

「ま、まあ、そうだけど……」

 私は次の言葉が思い浮かばなかった。

「さっ、俺も歌うか!」

 ……それからは、普通にカラオケを楽しみました。


♪カナエ×ルト編    終♪