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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.25 )
日時: 2013/05/17 23:11
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

ショウ *1*

『でもね、私も、あそこにいるエリちゃんも、私の弟のカエも、妹のカコも、院長さんだってショウ君のこと、捨てないよ。だって、喧嘩しても、何か事情があって離れる事になっても、心はつながってるって私は信じてるから』

 少し出掛けて来ます。
 その置き手紙を見た時から、俺の思考は自動的に過去に飛んでしまった。

 少し出掛けて来る。そのカナエの言葉を信じたかった。だけど、どうしても信じることが出来ない。

 あの日のカナエの言葉が、どれだけ俺の心に響いたか。
 あの日のカナエの真剣な目が、どれだけ俺の心を見抜いてくれたか。
 あの日のカナエの手が、どれだけ温かかったか。
 あの日のカナエの笑顔が、どれだけ俺の心を癒やしてくれたか……

 だからこそ、カナエが俺達に何も言わずに消えてしまった。別に俺達のことなんてどうでもよかったんだ。と思ってしまうと、どうしようもなく辛く、そんな風に考えて、カナエをイマイチ信じきれていない自分が、とてつもなく嫌になった。


 ふと隣をみると、エリが自分を凝視していることに気が付いた。

「大丈夫。カナエに捨てられた、なんて思わないから」

 エリは、とても心配そうに俺を見ていた。
 不自然な笑顔にならないように気を付けながら、優しく言った。

「えっ、あっ……」

 図星だな。耳たぶをつまんでいるのは動揺している時のエリの癖だ。

「カナエ、すぐに帰ってくるよな」

 自分に言い聞かせるように言った。
 エリは、どうしたら良いのか分からない。という感じの顔をしている。

「行こう」

 カナエのこと、信じたい。
 ——いや、信じてやろうじゃないか!
 発想を変えてみた。このほうが楽だしな。