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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.32 )
日時: 2013/05/17 23:21
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第二章 *2*

 気分が落ち着いたところで、私はもう一度ゆっくり部屋を見回してみた。

 今いるベッドは、ふかふかで、天蓋付きだ。そして、私が好きな色の緑を基調とした、ナチュラルなデザイン。
 部屋の雰囲気も、ゴテゴテしていない。

 なんとなく、私が住んでいた部屋に似ている。

 お客様用の部屋が、全てこうなのか少し気になったので、聞いてみることにした。

「ねぇ、ルト。この部屋って——」
「あっ、気付いてくれた?」

 私の言葉を半ば遮るようにしてルトは話しだした。

「俺がね、幼なじみとしてカナエの部屋をデザインしたんだ。なるべく、カナエの前の部屋に近づけようと思ったんだけど」

 口調、戻った。

 ルトがデザインしてくれたんだ。凄い。この部屋、落ち着く。
 私の好みをきちんと分かってて、覚えててくれたんだ。と思うと、すごく嬉しい。

「あと、洋服も。なるべくカナエが好きそうなのを選んだんだけど、四年くらい会ってなかったから……」

 だんだん声が小さくなっていくルト。
 さっきから気になってたんだよね、ルトが引っ張っていたもの。あそこに服が掛かってたんだ。

 心配そうにこちらを見ているルト。
 背も高くなって、強くなったって言ってても、昔と変わらないところもあるなぁ。と思った。

「その服、私、絶対気に入ると思う。昔と好みあんまり変わってないし。ルトが選んでくれたんでしょ? なら、大丈夫」

 お部屋も、こんなに私好みに用意してくれたんだから、服も私好みにしてくれていると思う。
 それに、なんだかんだいって昔から、ルトは泣き虫の割にみんなのこと見てくれてたからな。

「っ!」

 急にうつむき、目を逸らして黙ったルト。
 ん?

「どうしたの?」
「ふー。すー、はー。」

 深呼吸? 本当にどうしたんだろう?

「いえ。なんでもありません。そろそろ執事に戻らせていただきます」

 あっ。戻った、けど——
 顔が微妙に赤い?

 まぁ、いいか?
 聞いたとしても、また、『いえ。なんでもありません』ニコッ。って言われるだろうし……

「そうだ! 今日、みんなに事情を説明しに行きたいんだけど?」

 バタバタして、誰にも何も言ってきてないもんね。
 ルトが一瞬悲しそうな顔をしたのを、私は見逃さなかった。

「その事なんですが」

 やっぱり。
 あんな顔してたんだから、私の希望は通らないんだってことくらい分かっちゃうよ。

「カナエ様は今日からずっとレッスンがあるので、宮廷からは出られません」
「そう」

 ほらね。

 私は、ある考えを思いついた。

「ねぇ、レッスンが無い時間ってある?」
「どうしてですか?」

 かなり、訝しげに聞かれる。
 もっと落ち込むって思われてたんだろうな。
 私は、なんか企んでるってばれないようになるべく明るく言った。

「私、昔から武術をしてみたかったんだよね! だから、そのレッスンもいれて欲しいなぁ、と思って」

 上手くいったはず。
 武術がしたいと思っていたのは本当のことだし。

 一瞬、ルトが顔をしかめた気がしたけど、気のせいだよね?

「分かりました。では、そろそろ準備をお願いします」
「はい」

 絶対に、みんなに伝えにいく。