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- Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.34 )
- 日時: 2013/05/24 21:47
- 名前: 音 (ID: HFyTdTQr)
第二章 *3*
私は、ルトが選んでくれた服から、薄い緑のドレスの腰のところに濃い緑のリボンを結ぶタイプのところどころにレースが付いた服を選んだ。
髪は、お母様がしてくれた中で一番気にいっている、上半分だけをとって左側で腰のリボンと似たリボンで結び、毛先を少しだけ巻くという感じの髪型にした。
今日は、まず初めに国王様に会うみたいだから、いつも以上におめかしした。
「ごめん。お待たせ」
「っ!」
ルトは目を見開いてから、私から顔を背けた。
「はぁ。 とてもお似合いですよ」
なんでため息?
でも、お似合いって……変。
なんか、さっきからちょくちょくルトの顔がほんのり赤いけど、熱でも無いといいな。
「ん? ありがとう」
「では、行きましょう」
ルトに無理矢理、話を終わらせられた感じがする。
歩き出そうとした途端、ドンッ! と思いっきり誰かにぶつかった。
「っ! ったたた」
ぶつかったのは、灰色の髪と目の女の子。
その子は私を一目見ると、素早く立ち上がったので凄いびっくりしたけど、その後のセリフを聞いた途端、度肝を抜かれてしまった。
「はっ!? あわわわわわわわわっ! ししししししししし失礼しましたぁっ! お、お怪我はありませんか?」
女の子は、半泣きになりながら、すごい勢いで謝ってくれる。
服装からしてメイドさん、かな。
「私は大丈夫だよ。あなたこそ大丈夫?」
私が驚きから回復して聞くと、次は女の子が驚く番になったみたいです。
「はっ!? も、もちろんですっ!」
背筋がピンと伸びていて、兵隊さんみたい。と思ってしまった。
「良かった。お名前は?」
何気無く聞いた。
「へっ!? そそそそそんなっ! 名乗る程の者ではっ!」
——名乗る程の人じゃない……?
「あっ、それは……」
ルトが、ヤバいという風に言ったけど、それより——
「ルト。黙りなさい」
「すいません」
素直。
私は、スイッチが入ってしまった。
「あのね、あなただって名前はあるでしょ。なのに、そんな事を言うと、名前を付けてくれた方に失礼よ」
「すっ、すいません……」
女の子は、また半泣きになっている。
あれ? なんで?
はっ! またやっちゃった。スイッチが入っちゃうと余計な事を言っちゃうんだよね、私……。
「あーあ」
壁に寄りかかりながら見ていたらしいルトが言った。
「もう。ルト、出来れば止めて欲しかった」
言ってから私は、ルトに微妙に八つ当たりをしてしまった。と思った。
するとルトは、「だって、カナエの演説、聞きたかったから」と言って、舌を出した。
雰囲気を軽くしてくれたことに感謝しつつ、私がムーっとしていると、女の子がおずおずと声をかけてくれた。
「あの、私、新米メイドのエミリでございます」
引かれたかな? と思っていたから、名乗ってくれて嬉しかった。
「ありがとう! これから、よろしくね!」
私は、笑顔で言った。
「こ、こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」
そんなにかしこまらなくても良いのにと言おうとしたところで、ルトから声がかかった。
「カナエ様、そろそろ行かないと」
忘れてた。
王様に挨拶だった。
「じゃあ、またね。エミリちゃん」
「はっ、はい! 行ってらっしゃいませっ!」
エミリちゃんは、深々とお辞儀をしてくれている。
「ふふっ」
思わず笑ってしまった。