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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.46 )
日時: 2013/05/18 09:51
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第二章 *5*

「はい、笑おう!」

 ——ど、どちら様ですか?

「っていうか、女の子のほっぺってふわふわだねぇ。それとも、カナエちゃんがふわふわなだけ?」

 薄い赤の髪とそれと似た色の目の、服の所々に絵の具がついている男の子が、いつの間にか、私のほっぺたをぷにぷにと触っている。

 っていうか、誰……?

「すいません、ショーン様。カナエ様が困っています」

 ルト、ありがとう。
 正直、かなり困ってた

「えっ? あぁ、ごめんね! まだ自己紹介してなかった! 俺は宮廷画家の息子で、ショーンっていうんだ。よろしくね!」

 凄い爽やかで、良い人そう。
 ——でも、この人どこかで……

「でもさ、会った事あるよね?」

 顔を覗き込まれる。少しどきっとしたことは置いとくとして……
 ショーン様? ショーンさん?

「カナエ様? まさか、覚えてない?」

 もう、今思い出そうとしてるの! ちょっと待ってよ?

「そ、そんな事ないでしょ? もう、ルトってば余計なことを……」

 さすがに覚えてないなんて言えないもんね。
 ルトは、絶対分かってるよね。私が覚えてないってこと……

「えっ? 君、ルト? あの泣き虫のルト!?」

 そう言って、彼はルトのそばまで歩いて行って、背くらべをしだした。
 同じくらいの高さ、かな?

「大きくなったなぁ!」

 じゃないんです! 思い出さないとっ……って!

「あぁぁぁ! あの時の!」

 あー。思い出した拍子に、大声出しちゃったよ。はぁ。

「すいません」

 しかも、自分から覚えてなかったって言っちゃったようなことに……

「いいよいいよ。あれから病気になってない?」

 優しく笑いながら言ってくれるショーン君。

 そういえば昔、ショーン君ご家族が家に来た時に、私は丁度高熱を出してしまっていたなぁ。
 だから、あんまり遊んでもらってな、い……

「っ!」

 顔に熱が集まっていくのが、自分でも分かる。
 そして、私の意識は過去へと飛んだ。

〜〜〜〜〜〜〜

 私が熱で寝ていると、ショーン君が入って来た。

『カナエちゃん! 大丈夫? おかゆ作って来たよ!』

 ショーン君が、ピンク色のエプロンをつけていたことは、今でもはっきり覚えてる。 

『あっ、いいです。食欲ないので……』

 私が答えてる間に、椅子をベッドの横に持って来て座ったショーン君。

『うーん。でも食べないと』

 そう言って腕を組み、考えこみ出したショーン君。

『そうだ! はい、あーん』
『はっ!? えっ!?』

 口の前にあるスプーン。状況が飲み込めない私。

『いいですっ!』

 食欲がないしなんか恥ずかしいし……ということで断った。

『えー? どうしても食欲ない?』
『はい』

 弟もルトもいるくせに、男の子に慣れていない私は、この時点でもう赤かったのに……。

『そっか。じゃあ、また欲しくなったら言ってね』

 そう言って、ショーン君はおかゆを食べはじめた。

 え? それって、また作ってくれるって事なの?

 それはさすがに申し訳なさすぎる。と思った。

『あの、それ——』
『あっ、欲しい? はい! あーん』

 ま、満面の笑みで言われても……

『いやいやいや! 違います!』

 だってそれって、完全に間接k——。考えるのはやめておこう。

『ん? 顔赤いよ? 熱上がったかな?』

 あなたのせいですっ! とは、さすがに言えなかった。

『大丈夫ですっ! 少し寝ます! おやすみなさい!』

 これ以上何されるか分からないので、私は急いでふとんをかぶった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おーい! カナエちゃん大丈夫? また熱?」

 私は、頭の中でひそかにショーン君は天然の危険人物だと決めた。

「そ、そ、そ、そんなことないです!」
「カナエ様、顔が赤いですよ」

 ルト、わざわざショーン君が熱って言った私の顔が赤いこと言わないでよ! って言うか、言わなくていいでしょ。




「ははははっ! みんな仲が良いな!」