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Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.63 )
日時: 2013/05/18 18:50
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

ショウ *3*

「姉ちゃん、帰って来なかったね」
「…………」

 沈黙。

 今、俺、エリ、カエの三人は、ベットとタンスを置いただけの殺風景な狭い部屋の中心に円になって座っている。
 カナエの部屋には、季節の花とかが色々飾ってあっておしゃれだったから……って、比べるのおかしいか。女子と男子の違いが大きいだろうし。
 第一、俺の部屋もこんなもんだし。ここより少し汚いくらい。カエの部屋、綺麗過ぎだろ。

 そんな綺麗過ぎる部屋のタンスの上には、明らかに男子らしくないというか、カエらしくない物が飾ってある。

 額に飾られた押し花だ。

 ほんと、カエらしくないなぁ。と思っていると、カナエが昔「カエに押し花あげたけど嫌がられちゃったー」って言ってたことを思い出した。
 そして次の日、カエが「いらないちっちゃめな箱と薄い透明なカバーみたいなのない?」って聞いてきて、俺がいくつか持ってきた中で一番おしゃれでそこまで厚くない箱を持って行ったのも思い出した。

 額だと思ったものが、その時の箱だと分かった。

 なかなかカエの部屋をゆっくり眺めることはないので、気づかなかった。

 それにしても、あんなに綺麗に飾ってあるなんて。

 カエにも、かわいいところがあるんだな。と、何気に失礼な事を考えて、ふと思った。

 カエって、シスコン?

 なんでも良く出来るカエ。金髪が混ざってる事も手伝ってか、俺とは少し違う世界の人だ。という考えが、頭の片隅にあった。
 でも、シスコン疑惑が浮上してみると、グッと親近感がわいてしまう。そういう自分が、かなり単純だな。とも感じる。

「カエ、心当たりあるんじゃないのか?」

 かなり長い沈黙で、カエがなかなか本題に入ろうとしないので、無理矢理、話を進めた。

「うん。無いことはないんだけど……。俺が言いたかったのは、姉ちゃんを信じて欲しいってこと」

 俺の目をじーっと見て話すカエ。

「うん」

 もし信じられてなくても、このいつにない真剣なカエの目を見たら、そう言うしかなくなる。

 同時に、カナエだけではなく俺も、かなり皆に心配をかけていたことに気付き、申し訳ない気持ちになった。

「あっ。あたし、皆を寝かせてくる!」

 急に言い出したエリ。

「大丈夫。カナエは、帰って来るよね! 兄妹残してるし」

 なんか、自分にも言い聞かせているような感じで言ってから、エリが皆を寝かせに行った。


 それからしばらく沈黙が続いたが、カエが急に変なことを言ってきた。

「あっ。そうだ! ずっと聞きたかったんだけど、ショウ兄ちゃんってさ、姉ちゃんのこと好きだよね」
「はぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」

 好きだよね? という疑問形でなく、好きだよね。という形で言ってきたことも、俺が驚いた原因だ。

「うるさい……」

 っていうか、俺が、カナエのこと好き……?

 ま、まさかっ!

「そっかぁ。でも、姉ちゃんモテるよ?」

 そっかぁ。ってなんだよ? 何に納得したんだよ?
 何を思ったのか、カエはニヤニヤしている。

「別に、俺、好きな奴とかいないからっ! まず、女の子あんま知らないからっ!」

 うわー。俺、何動揺してんだ?

「俺のカンでは、ショウ兄ちゃんは姉ちゃんのことが好き。まぁ、所詮カンだから。気にしないで」

 な。

 何を言い出すんだよ、カエ……。

 自分から話をふっといて相手を散々動揺させた後、別に俺関係無いからって話を終わらせたように見せかけて、その後の相手が悶々としている反応を見て楽しむのが、カエの手口だ。

 もっとも被害にあっているのはカナエだけど、まさか俺まで……

 ——うん。分かった!

 俺には、恋愛はまだ早いっ!

 ん? カエ、なんか呆れた感じの顔してる……
 なんでだろ?