コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.72 )
日時: 2013/05/18 21:00
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第三章 *1*

「12時。……よしっ!」

 私は部屋の窓に足を掛けて、飛び降りた。

「っ。はぁ……」

 危なかった。2階で良かったぁ。

 それにしても、この格好で脱走とか、ちょっと辛いかも……。

 私は、真っ白なネグリジェを着ていた。

 ——汚さないように気を付けなきゃね。

 さて、誰かに見つからないようにそろそろ進まないと、ね。

「カナエ……?」

 やっ、ヤバいっ!

 ここは、天使のふりでもして逃げなければっ! ——丁度、白いし。

「逃げるなっ!」

 あっ、手を掴まれてしまいました……。

「お願いっ! 見なかった事にして、行かせて!」

 ルトに強く握られていて、動けない。

「うーん。どうしようかなぁ?」

 見逃してくれる!? お願いっ!

「——なんて、言うと思った? 俺がカナエを一人で行かせる訳無いだろ」

 あ。やっぱりだめか……

「ごめんなさい」

 でも、行きたい。

「何に対して謝ってるの?」

 そう言って笑いながら、ルトは私を再びお姫様抱っこした。

「ちょっ、ちょっと!」

 え?

「もしかして、連れて行ってくれるの?」

 微かな希望を胸に、駄目もとで聞いてみた。

 ルトは頷いた。

「えっ。でも、ルト、怒られちゃうよ?」

 自分で聞いたくせに、失礼かな……?

「うーん。今、俺、幼なじみを優先してるから。それにカナエ、どうしても行くって言うだろ? だったら、その時にカナエの事守るのが、他の奴だったら嫌だし……」

 ルトは赤くなって、そっぽを向いてしまった。

 そ、それってどういう意味なんだろう? でも、守りたいって言ってくれてるみたいで、とても嬉しかった。

「ぁ、ありがとう……」

 私も、ルトにつられて赤くなってしまい、気まずい雰囲気になってしまった。

Re: 宮廷物語〜試練時々恋愛〜 ( No.73 )
日時: 2013/05/24 21:44
名前: 音 (ID: HFyTdTQr)

第三章 *2*

「あの、私、自分で歩くから降ろして?」

 沈黙に耐えられないよ。

 ルトはあれからずっと、無言で歩いていた。

「汚れるだろ?」

「う、うん」

 まぁ、それもそうだけどね。

「そいえばさ、カナエ、さっき天使っぽくして逃げようとしただろ?」
「え? そ、そんなことないよ?」

 ばれた。しかも、声裏返った。ていうか、天使のふりをしたのもばれちゃうなんて……

 ルトは私の反応で分かってしまったみたいで、それ以上何も言ってこなくなった。

 そうこうしている間に、サイヤさんが警備している門の前に着いた。

「カナエ——とルトさん?」

 あれ? 昼間は結構表情の変化があったのに、今はかなり不機嫌そうな表情をしている。

「行ってきます。
 ——俺一応、こいつの執事なんで」

 ルトもルトで、なんか機嫌が悪い。

 サイヤさんは、無言で門を開けた。

「なっ、なるべく早く帰ってきますっ!」

 なんで今回、こんな無言が多いの!?
 耐え切れずに、なかば叫ぶように宣言した。

 皆さん、顔が怖いです。



 街に出ると、一日もたって無いのに、かなり懐かしく感じた。

 皆に説明したら、しばらくここには来られないんだろうな

 ——なんて、しみじみするのはおかしいよね! 別に、もう来られない訳じゃないし。

「カナエ、何考えてんだ?もう着いたけど?」

 不意に話しかけられて驚いた。

「あっ、ゴメンね。ぼーっとしてた——」
「あーあ。やっぱり来ちゃったよ……。馬鹿姉ちゃんとその彼氏」

「「「「はあっ!?」」」」