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幼なじみから恋人までの距離(9) ( No.11 )
日時: 2013/05/02 19:19
名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)

教室に着くやいなや、俺と香凛は作戦会議をしていた。

「よし、とりあえず最初のミッションは『クラスの男子と仲良くおしゃべりしちゃおう作戦』だ!」

まだ早い朝の教室。

人はまばらだし、さりとて授業が始まるまでは、やる事がないから暇そうにしてる奴も多い。
絶好のチャンスではあるまいか。

「……ネーミングセンス無いわね」

「ど、どうでもいいだろ!! それより、ホラホラ」

俺は香凛の背中を押して、手近な男子の所へ送り出す。

「お、おはよ。野村君」

緊張しているのか、魔王の衝動を抑えているからか、どことなくぎこちない香凛。

「おはよー!! 中川さん」

だが、声をかけられて野村はかなり嬉しそうだ。

野村は見た目が可愛い女子なら誰が相手でもこんな感じだ。
クラスでも評判のチャラ男で、茶髪に着くずした制服が特徴的で、本人的にはカッコいいと思っている。

あえて言おう。だらしないだけだぞ。

「き、今日は、良い天気ね」

おいおい。いきなり天気の話しなんて、お見合いかっての。
話題がない時にとりあえずする話題ナンバーワンだろそれ。

「そうだね〜!! 中川さんに話しかけてもらえるなんて、今日は何て良い日なんだ!!」

しかし、野村はまったく気にしてないようだ。舞い上がってしまってる。

「そうだ!! 中川さん、アドレス交換しない? 転校してきて間もないでしょ? 良かったら、この辺案内するよ」

「え、えーっと、アドレスとか……それにこの辺はよく知ってるし……」

小さな声で呟く香凛。

だが、野村は妄想世界にトリップ中で聞こえてないようだ。

「そうだな〜。まずは駅前で……それで……」

「……えーっと、野村君?」

「よし!! 俺は今日から中川さんの事、香凛って呼んで良いかな?」

「えっ、ええっーー!!」

「じゃあ、香凛。手始めに今日の放課後にでも、駅前の美味しい紅茶でも飲みに行こうよ」

そう言って、野村は馴れ馴れしい感じで香凛を呼ぶ。
お前はイタリア人か!!

「…………」

よく見ると、香凛が肩を震わせている。
これは爆発五秒前ってところだな。

そう思っていたところに、野村がトドメの肩を抱くようなスキンシップをしてしまった。


その瞬間——。


描写ができないほどの、見事なコークスクリューパンチが野村のみぞおちにクリティカルヒットした。