コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 幼なじみから恋人までの距離(最終更新5月14日) ( No.33 )
- 日時: 2013/05/17 19:05
- 名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)
なんて、ちょっと良い雰囲気になっている場合じゃない。
「本当の用事を忘れるな。母の日プレゼント、探すんだろ」
俺たちはペットショップを出てきた。
夕方も近くなって、日曜のファッションビルはさらに人でにぎわっている。
ベビーカーに子供を乗せた若い夫婦、中学生くらいの娘と一緒のおばさん、それから、俺たちくらいの年齢のカップルなんかが目の前を歩いていった。
そのまましばらく歩いていると、急に香凛が立ち止まる。
「どうした?」
「な、なんでもない」
視線の先には、外観が赤やピンクを基調とした鮮やかな色のクレープ屋があった。
ははーん。もしかして食べたいんじゃないか?
「食べたいのか?」
「そ、そんな訳ないでしょ」
香凛は興味ないという態度をとるが、これはあきらかに「食べたい」というオーラが出てる。
素直じゃねぇなまったく。
「あぁ〜、俺ちょっと疲れちまったからあそこで休憩してこうぜ」
そう言って、俺はクレープ屋を指差した。
香凛は少し考えた後、いかにも香凛らしい返事をした。
「し、仕方ないわね。あんたがどうしてもって言うなら行ってあげるわ」
「あぁ、悪いな」
なんとなくだか、香凛の扱い方がわかってきた。
こいつは素直じゃないので、行きたくても行きたいと言えないのだ。
まして相手が俺ならなおのこと素直になれないのだろう。
男だし、若干敬遠されてるしな。
俺達は店の前まで来ると、メニューを見る。
……よくわからん。
ガラスのショーケースの中にサンプルがあったのでそちらに目をやる。
いちごクレープやら、チョコバナナクレープやら、ブルーベリークレープやら、とにかく甘ったるそうな代物が並んでいる。
俺からしてみたら、歯がとけるんじゃないか? ってぐらいだ。
特にこの、ベイクドチーズケーキ&アイスクリームクレープって……ケーキなのか、アイスなのか、ハッキリしろと言いたい。
「決まったの?」
思案していると、香凛に話しかけられた。
「いや、まだだ」
「そう。じゃあ先に注文するから」
そう言って香凛はレジに行き、なれた感じで注文をする。
ふむ……。
俺が行こうって言い出したんだから食べないでドリンクだけって訳にはいかんだろうな。
その時、以前雪乃が言っていた惣菜クレープの存在を思い出した。
探してみると数は少ないが、惣菜クレープがあった。
ツナサラダやら、ベーコンエッグやら……クレープと合うのか? という疑問はあったが、甘ったるいクレープを食べるよりはマシだ。
というわけで、無難なツナサラダクレープを頼む事にした。
クレープを受け取ると、先に席に座って待っていた香凛のところへ。
「待たしたな。香凛は何したんだ?」
「ベリーベリーベリークレープ」
そう言って俺に見せてきたクレープは、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーが入ったクレープみたいだ。
ベリーベリーベリークレープ。注文する時言いづらいよなコレ。
「あんたは?」
「ツナサラダクレープだ」
「……らしいわね」
香凛は納得っといった顔をしてきた。
まぁ、俺は甘いの苦手だしな。
さっそく一口食べてみると、意外に美味かった。
クレープ生地じゃなく、違うパンチのある生地ならさらに良い気もするが、それだとクレープではなくなるのだろう。
「う〜ん!! おいしーっ!!」
ふと隣を見ると、香凛がクレープを食べながら、足をバタバタさせて感激していた。
しぶってたわりに、ノリノリじゃないすか。
「良かったな」
「はっ!! こ、ここのクレープ美味しいわね」
我に返り、冷静に言い直してるがもう遅いから。
「あ、あんたはどうなの?」
「あぁ、美味いよ。良かったら一口食べてみるか?」
そう言って、香凛の口元に俺のクレープを持っていくと香凛が動揺する。
「こ、こ、これは、そ、その」
「どうした? 早く食えよ」
俺がそう促すと、香凛は目をつぶって勢いよくかぶりついた。
「美味いか?」
「……お、美味しい……」
なぜだかクレープを食べたら香凛の顔が真っ赤になった。
風邪でも引いたのか?