コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 幼なじみから恋人までの距離(4) ( No.4 )
- 日時: 2013/04/28 18:58
- 名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)
ボヤッとした白い霧の中、妙に既視感がある光景を見ていた。
小さな子供が三人、公園で遊んでいるところが見える。
小さいが見慣れた自分の顔。
となりには、雪乃や香凛も居る。
これは……夢?
ふわふわして、まるで空の上から眺めているようだ。
「しょうくん。次はなにして遊ぶのー?」
幼い頃の雪乃が俺に話しかけている。
「うーん、俺駅前の店のガチャガチャをやりに行きたいんだ」
そうだ。
この時の俺、当時流行っていたロボットもののフィギュアが欲しかったんだっけ。
「でも、もうすぐ暗くなっちゃうよ〜?」
「俺一人で行くから、ゆきのは帰れよ」
何か子供の俺ちょっと嫌な奴だな。もう少しやんわりと言えよ。
それで確かこの後、雪乃は帰って……。
「わかった〜。じゃあ先に帰ってるね」
「おう。またな」
そう言うと、雪乃は帰っていく。
残ったのは俺と香凛。
「かりんはどうする?」
「うーん、私もしょうと一緒に行くよ」
そう言って、俺と香凛は黄昏に染まっていく公園を離れて駅前に向かった。
公園から駅前までは、大人の足でおよそ十分ってところだが、当時は遠く感じたよな。
駅前の店に着くと、俺はガチャガチャを回しはじめていた。
確か、なけなしの小づかいはたいて挑戦したんだっけ?
「あぁーっ!! ハズレだ……」
悔しそうに叫ぶ俺。
ここの店のガチャガチャ黒いカプセルに入っていて、中身はランダムなんだよな。
今から思えば、本当にアタリが入っていたのか疑問だ。
「しょう、どうするの?」
「悔しいけど、帰るしかないな。小遣いなくなっちゃったし」
そう言うと、俺と香凛はもと来た道を帰っていた。
しばらく歩いていると、不意に俺が立ち止まる。
「なぁ、かりん。近道していかないか?」
「近道?」
「あぁ、こっちの道を通って帰ろうぜ」
そう言って俺が指さした方向は暗がりの路地裏。
我ながら軽率な行動だ。
香凛は止めたのに『道はつながってるんだ』とか言って、強行したあげく散々迷ったんだよな。
案の定と言うか、俺の記憶通り道に迷って、見知らぬ場所に不安げな二人が居た。
「しょう……ここどこ?」
「……わからない」
俺がそう言うと、香凛の顔が不安でいっぱいになる。
夢の中とはいえ、思い出したくない過去だ。
自分の考えのなさに腹がたつ。
「……わからないって、どうやって帰るの……?」
「……わからないよ」
その言葉を聞くと、香凛は泣き出してしまう。
「うぅっ……暗いの怖いよ……早く帰りたいよ……」
「…………」
香凛は決壊したダムのように、わんわん泣き出す。
この時、俺はなんとか泣き止んでほしいって思ったんだよな。
「……かりん、泣くなよ。ほら、これやるから」
そう言って俺が出したのは、先ほどのガチャガチャのハズレ商品。
安っぽいプラスチックの指輪だ。
俺にとってはなんの価値もないものだったが、雪乃や香凛はよくこういう玩具に目を輝かせていたのを知っていた。
「……これ……は?」
「さっきのガチャガチャで取ったんだ。かりんにやるよ」
ぶっきらぼうに顔を背けながら香凛に手渡す。
香凛は恐る恐るそれを受け取った。
「……えへへ……ありがと。しょう」
「……別にいいよ。そのかわり大事にしろよ」
この時の俺はなんだか恥ずかしくて、香凛の顔を見れなかったけど、泣き止んでくれたし良かったって思ったんだよな。
「……うんっ!!」
元気な、はずむような声で香凛は頷いた。
そこで白い霧が濃くなっていく。
見ている景色が真っ白にフェードアウトしていった。
「…………夢か」
目が覚めると、見慣れた自分の部屋。
子供の頃の夢を見るなんて珍しいよな。
確かあの後、心配した親父達が探しにきてくれてなんとか帰る事ができたんだっけ。
こっぴどく叱られたのは覚えてるな。
時計を見ると、いつもよりやや早い時間だったが、準備をする事にした。