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幼なじみから恋人までの距離(5) ( No.5 )
日時: 2013/04/28 20:03
名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)

人の言葉ってのは、時に理不尽だったりするね。

隣の花は赤いって、ことわざもあるけど、表面しか見ていないから綺麗に見えるものもある。
たとえば、それは今流行りのアイドルだったり、芸能人だったりするわけだけど、本やテレビを通して見る情報って一体どれくらい正しいんだろう?

人の見た目で判断するな!! なんて昔言われたけど、実は人って外見を見て無意識に判断してるんだってどこかの研究者が言ってたよ。

何でこんな事考えてるかっていうと、俺は今ものすごくめんどうな事に首を突っこもうとしているからだ。


あれは、香凛が転校してきてから一週間が過ぎた話しだ。

感動の再会? から一週間が過ぎた。

再会の仕方が最悪だったせいか、四年ぶりだってのに俺と香凛はほとんど口をきいていなかった。

オマケに『ムッツリ』のあだ名が定着しそうだから困ったもんだ。
ムッツリって印象悪いよな。
どうせならオープンの方が良いよ。……いや、そんな不名誉なあだ名は嫌だけどさ。


「へ〜、そうなんだ!!」

放課後の教室。

部活や委員会などで、教室に残る生徒が少なくなる中、香凛はこの一週間で親しくなったクラスメイトの女子と談笑していた。

「中川さんって、すごく可愛いよね〜。前の学校ですごくモテたんじゃない?」

「そんな事ないよ〜。それに、前の学校は女子校だったし」

「えーっ。じゃあ女の子から?」

「ないない。仲良い子は居たけどね」

和やかな雰囲気の中で、楽しそうにお喋りする香凛。


「……あれでもう少しツンツンしてなかったらなぁ……」

俺は横目でその光景を見ながら、そんな事を呟く。

女子と話す時は終始笑顔なんだが、男子に話す時は目つきや口調がキツくなる。

一部男子には好評だが……それは特殊なケースだろう。

「っ……!! 何、ジロジロ見てんのよ!!」

目が合った瞬間に因縁をつけられる。

俺にたいしては、南極のブリザードなみに冷たい。

「見てねーよ」

「っ!! 本当ウザい!!」

ぐっ!! 何てムカつくやつだ!!

だいたい俺が何をしたって、あんなつっけんどんな態度とるんだよ。

「翔君、お待たせ〜」

その時、教室の険悪な空気を切り裂く、のほほんとした雪乃の声が聞こえてきた。

「ん? どうかしたの?」

「別に何でもねーよ。さっ、早く帰ろうぜ」

これ以上香凛にかかわってると、ロクな事はなさそうだからさっさと帰るにかぎる。

そう思って早々に立ち去ろうとしたのだが、雪乃が香凛に声をかける。

「香凛ちゃんも、久々に一緒に帰らない?」

雪乃が香凛に、くったくのない笑顔で話しかける。

「……私はいい。そこのムッツリと一緒になんて帰りたくないから」

香凛は吐き捨てるかのように、鋭く尖った言葉を俺に投げつけてくる。

「誰がムッツリだっ!!」

「あんたよ、あんた。何回も言わなきゃ理解できないほどバカなの?」

「こ、この言わせておけば……!!」

香凛はそう言うと、俺の返事を待つ間もなく教室から出ていった。

教室から出ていく香凛を追いかける雪乃。

雪乃には悪いけど、あの様子じゃ一緒に帰りそうにないな。


「……ふぅ、何か香凛が来てから俺の平和が乱されてる気がするよなぁ」

「武田君?」

不意にさっきまで香凛と話していた女子が俺に話しかけてきた。

「ん? 何か用?」

「あの……これ。多分中川さんの忘れ物だと思うんだけど」

そう言って差し出してきた物は、シックな色合いの手帳だった。

「それ、中川さんに返しておいてくれないかな?」

「えっ、俺が?」

「うん。武田君、中川さんと仲良いでしょ? 私これから用事あってさ〜お願いね」

「えっ、おい!! ちょっと!!」

それだけ言うと女子(まだ名前を覚えてない)はさっさと帰ってしまった。