コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

幼なじみから恋人までの距離(28) ( No.50 )
日時: 2013/06/02 18:47
名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)

「やーばっ!! 雪乃さん料理マジで上手いんだね」

「本当だね。こんな美味しいパスタ家で食べた事ないかも」

同じ班の連中が口々にそんな事を言う。
どうやら雪乃の作った料理が好評らしい。

まぁ、あいつの料理の腕前はプロ並みって言っても過言じゃない。
いつも、雪乃が作ってきた差し入れを食べてる俺が言うから間違いない。

「ほ、褒めすぎだよ〜。そんな大した物は作ってないんだし」

絶賛されて、やや照れながらも謙遜をする雪乃。
本人は普段と変わらない料理なのだろうが、周りからしてみたらそれは凄い事なのだろう。

ってか、お前ら雪乃に任せ過ぎだろ!!
……まぁ、俺も人の事は言えないけど。

「あっ、翔く〜ん」

雪乃は、様子を見ていた俺を見つけて手を振りながら呼んでくる。
この近距離で手を振られると恥ずかしいんですが……。

案の定、注目を集めてしまった俺は仕方なく雪乃のところへ。
ここでスルーすると余計に目立つし。

「雪乃の料理、大好評みたいだな」

「えへへ、いつも通りに作っただけなんだけど、みんな褒めてくれて」

そう言う、雪乃の言葉には嫌味がない。
ちょっと狙った感じなら、こんな事を言うと、猫かぶってるとか言われてしまうだろう。

「そりゃ、本当に美味いからだろ?」

「そ、そうかな〜? あっ、良かったら翔君も食べない?」

そう言って雪乃が差し出した料理は、ナポリタンと、ニンジン&キャベツの胡麻マヨサラダだった。

「おっ、良いのか?」

「うん。ちょっと作り過ぎちゃったから」

手近の席に座り、さっそくいただこうとしたのだが、あまりに戻ってこない俺の様子を見に来た香凛にとがめられる。

「あんた他の班で何やってんのよ?」

「いや……味見?」

「何で私に聞いてんのよ!?」

さっきまで結構良い雰囲気(特別な意味はないが)だったのだが、すっかり元の香凛に戻っていた。

「良かったら、香凛ちゃんもどうかな〜?」

雪乃はそんな事は意に介さず、香凛にも料理をすすめた。

「雪乃……。いいわ。じゃあ、私も食べる」

香凛は雪乃をチラッと見て、しばらく考えた後にそう返事をした。
やっぱり仲悪いのか?


「じゃあ、今香凛ちゃんの分も持ってくるね〜」

手早く用意する雪乃。

待ち時間もなく、あっという間に香凛の分が運ばれてきた。
なんつーか、良いお嫁さんになりそう。

「んじゃ、いただきます」

「……いただきます」

俺と香凛はそう言って、同時に食べはじめた。

食事の食べる順番としては、汁物が一番最初だが、今日はないのでサラダからいただく。

シャキシャキのみずみずしいキャベツの食感と胡麻マヨネーズの相性が良い。にんじんのアクセントも効いていて、さすがの一言だった。
他にも何か入ってるみたいだが、隠し味的なやつだろうか?

俺がそんな事を考えていると、香凛はナポリタンを食べて目を丸くしていた。

「お、おいしい……」

「良かった〜。香凛ちゃんの口に合うか心配だったんだ〜」

香凛の無意識な一言に、雪乃はほんわか笑顔で喜んでいた。

どれどれ、俺もそのナポリタンを食べてみるかな。
フォークでくるくる巻いて口の中へ。

うん、もう美味いの一言につきる。

ケチャップ独特のキツい酸味はなく、まろやかで優しい味が口の中に広がった。

「雪乃、これマジで美味いな」

「本当に? えへへ、翔君にそう言ってもらえると嬉しいなぁ」

雪乃は嬉しそうに微笑む。

そんな様子を見ていた野村が、勢いよく手をあげた。

「はいはい!! 俺も雪乃ちゃんの手料理食べたい!!」

野村よ……なぜお前は親しくもない女子をファーストネームで呼ぶんだ? やっぱりイタリア人なのか?

「うん。まだあるから良いよ〜」

ほんわか雪乃は、気にした様子もなく頷いた。

「雪乃ちゃん、マジ天使!!」

野村が軽いノリでそんな事を言う。

ちょっと野村をどつきたいと思ったのは俺だけじゃないはずだ。マジ天使ってなんだよ?

その後、野村は「うめー!! うめー!!」と叫びながら食べていた。


「しっかし、このサラダも、ニンジンのアクセントが良い感じで美味いよな」

俺が何気なく雪乃にそんな事を話していたら、隣りに居る香凛がピクッと反応した。