コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

幼なじみから恋人までの距離(6) ( No.6 )
日時: 2013/04/29 19:58
名前: あるゴマ ◆Dy0tsskLvY (ID: Ba9T.ag9)

半ば強引に押し付けられる形で受け取ってしまった手帳。

「……まいったな。ってかどこをどう見たら、俺と香凛が仲良く見えるんだよ」

さっきのやり取りだって聞いてたはずなのにな〜。
新手のイジメなの? これ。

にしても、香凛のイメージと合わないなこの手帳。
もっと主張が強い色合いのが似合いそうだもんな。
勝手な予想だけど。

「…………」

もしもだけど、この手帳が香凛のじゃなかったりしたら、まーたウザいとか言われてケンカになるんじゃないだろうか?

あっ、思い出したら腹立ってきた。

確認ついでに中身を少し見てやるか。

軽い気持ちだったが、『確認のため』という口実をつけて見る事に。
普段はこんな事しないよ……いや、マジで。

適当に手帳を開くと、何やら日記のようなものが目に入ってきた。


【O月X日。今日も上手く話せなかった。どうしても話そうとすると、嫌な態度になってしまう。……若干、自己嫌悪。】


……ん? 何だこれ?

パラパラとページをめくると、いずれも似たような内容で悩んでいる感じだった。

人の日記を見るのはさすがに趣味じゃないので、名前が書いてないかっていう確認の流し見程度だった。

だけど、どうもこの手帳の持ち主は、素直になりたいけどなれなくて悩んでるみたいだ。

「……うーん」

結局持ち主の名前は明記してなかったが、あの子が言う事が正しいなら、香凛の持ち物なのだろう。

「仕方ない。気は重いけど、香凛の家に行って確認してみるか……」


しばらくして雪乃が戻ってきたが、やはり香凛は一緒に帰る事を拒否したらしい。

結局その日は俺達二人で帰る事になった。

「翔君。帰りにクレープ食べない?」

「クレープ? あぁ〜俺パス。甘いのってあんま好きじゃなくて」

どうせ食べるなら、商店街の肉屋のコロッケとかが良いね。
あの味は家庭では出せないよ。うん。

「翔君知ってる〜? 今はお惣菜クレープとかもあるんだよ?」

「へぇ〜、それは商店街の肉屋のコロッケを超える味なのか?」

「そ、それは私にはわからないよ〜」

茜色に染まる町を二人並んで歩く。

思えば、雪乃とこうやって登下校するのも懐かしい。

二年生になってクラスに一緒になったせいか、最近は多い気がする。

「ところでさ、雪乃」

「ん? 何〜?」

「香凛の家ってここから近いのか?」

「ん〜とね、前の家から五分くらいの所って言ってたから近いと思うよ」

「場所とかわかる?」

「うん。良かったら地図書いてあげようか?」

「あぁ、助かる」

一応、例の手帳が本当に香凛のかどうか確認を取らないとな。持ってるのも気が引けるし。

「ふふふっ。翔君もなんだかんだ言って、香凛ちゃんの事心配なんだね」

「バ、バカ。そんなんじゃねぇよ」

雪乃にからかわれながら、俺は香凛の家に行くのだった。