コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.102 )
- 日時: 2013/07/04 23:04
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
「修学旅行3日目、お疲れ様でした!平和学習を通して、たくさんの沖縄を知ることが出来たと思います。そして、今日のことを忘れないでください。…いただきます!」
「いただきまーす」
学級委員の掛け声と共に、始まった夕食。
皆楽しそうに夕食を楽しんでいる。
私もその一人だった。
「あ!あたしがこれ入れるからみんなお皿頂戴」
「ありがと〜」
「ほい」
「そういえば聞いた?なんか西中がさ…」
そんな声が私の耳に聞こえてくる。
でも、私の視線はある人に釘づけだった。
そう、そのある人といのは——逢坂くんだった。
彼とは自動販売機前で会って以来全く話す機会が無った。
それにデマだとは分かっていても”あの話”を期待してしまう自分が居て、逢坂くんに話しかけることによって何かが変わってしまうのではないか?という恐怖心に囚われている所為もあり、自ら話しかけることが出来なくなっていた。
また、逢坂くんも私と同じような状況なのか、全く私に話しかけてこなくなった。
ん?
私と同じような状況って…まさか、ね?
「おーい、真奈?はい、これ」
「え?」
目の前にいきなりおかずが盛られた皿が現れて間抜けな声が出てしまった。
「ごめん〜。さっきからずっとぼーっとしてたからさ」
そう言って、優那が私の前にお皿を置く。
「ご、ごめんね。私も手伝うよ」
「いいのいいの〜。座ってて。それに私もさ」
「ん?」
私は私の左隣にいる優那を見上げる。
すると、彼女の赤く染まった頬が見えた。
「緊張解したいんだよね」
一瞬何を言っているのかと思ったがすぐに理解した。
この後開催されるリクリエーション。
これが終われば、彼女は石島くんに告白をするのだ。
「頑張れ!」
「うん!」
笑顔で頷く彼女に私も笑顔になる。
こうして、私達は夕食を存分に楽しんだのだった。
—レクリエーション開幕
「さーて、今日は皆さんが待ちに待った…トキメカNIGHT開催です!」
現在司会を務めている学級委員の南杏奈ちゃんのその言葉と共に一斉に歓声が上がる。
「イェーイ!」
「待ってましたー!」
「さてさてー、この輝かしき舞台を最初に飾ってくれるのは〜!!なんとこの3人です!どうぞ!」
こうして始まったレクリエーションは2時間を経て終幕へと向かった。
「…えー、この楽しかった時間も先程の出し物を最後としまして、閉幕とさせていただきます!ありがとうございました!」
「イェーイ!!」
「フォー!!」
口笛やらなんやら、あれこれと歓声が飛び交う。
そして、十分に盛り上がった後、一気に現実へと引き戻される。
「はい、皆さん。盛り上がってるところ失礼しますね。今後の予定なのですが、部屋に帰った後は、お風呂に入って22時30には就寝とします」
「え〜?」
「もうちょっと長くしてほしい〜!」
「駄目です。そういうわけですから、扉に近い人から順々に退場していってくださ〜い」
皆不平不満をこぼしながらも、素直に先生の指示に従う。
ここが頭の良い人たちの行動だ、と思い知らされる。
「そ、それじゃあ私、い、行ってくれね!」
最後の最後まで噛んだ、緊張した様子の優那が私たちの元を去って、石島くんの方へと向かっていく。
「いよいよだ、ね」
涼香までもその緊張が伝染したのか若干言葉に詰まっている。
「そうだね」
私の声も思わず緊張の色を帯びてしまう。
だが、美樹だけは冷静に
「明日の国際通り、2人で回るーとか言われたらいいよね」
と冗談めかして言っている。
情報というのは、ここまで人を落ち着かさせるものなのだ、ということを初めて感じさせられた瞬間でもあった。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.103 )
- 日時: 2013/07/06 11:19
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
ガチャ
優那が帰ってきた!
そう思ったのは、就寝時間を3分ほど過ぎてからのことだった。
「ど、どうだった?」
涼香が帰ってきたばかりの優那に問う。
優那は顔を伏せたまま何も言おうとしない。
寧ろ肩が震えている。
だ、駄目だったってこと?
そんな不安が頭をよぎるが、それを掻き消すような優那の声が部屋中に響き渡った。
「キャー—!」
「え?何!?」
突然の叫び声に、優那のすぐ傍にいた涼香が驚く。
「だ、だってだって…」
そう言って今度は涙を流しながら崩れ落ちる優那。
「わ、私告白して…」
「うん」
涼香も優那と同じように座って真剣な眼差しで話を聞いている。
私は優那の次の言葉を息をのんで待っている。
美樹も少し険しい表情になっている。
優那。そんなに間をあけないで…。
私まで胸が苦しくなる。
私が胸の前で握り拳を握っていると、優那が次の言葉を発した。
「成功、したの…」
「…嘘!?本当に?」
「うん」
「うっそー!?やった!やったじゃん!優那!やったー!」
涼香が自分のことのように騒ぎ始める。
私と美樹もそんな様子を見てほっと息をつく。
「じゃあ、何?最終日の国際通りは2人で回るの!?」
「ま、まさか!そんなことできるはずないよ!」
「どうしてよー?2人で行けばいいじゃん」
「えっと、その私が成功したから…涼香も、ね?」
「…へ?」
一瞬涼香は優那の言葉ができなかったのだろう。
しかし、時が経つにつれて意味を理解したようだ。
頬が真っ赤に染まっている。
「い、いやいやいやいや!国際通りで告白とか無理でしょ!いや、無理無理!あたしにはできません!」
「そう言わないの!この私だって告白できたんだから!わたしより活発的な涼香が失敗するはずないよ!ね!?」
今日の優那は少し迫力がある。
いつもはおっとりしてて、優しいというイメージなのだが…。
恋って人をこんなに変えるものなのか。
と私が間違った認識をしていると、涼香が急に静かになった。
「どうしたのよ?」
美樹が少し心配そうに尋ねる。
しかし、涼香は顔を伏せて答えようとしない。
「え!?あの、私なんかまずいこと言った?」
「い、言ってないよ。優那は何も悪くない」
「じゃあどうして?」
「その、明日のことを想像してしまって…」
耳まで赤く染めながら呟くその姿はまさに恋する乙女そのものだった。
「だーいじょうぶよ!あたしがチャンス作るから」
「チャンスって?」
「ふふーん。あたしに秘策があるのよ」
そう言って自慢げに鼻を高くする美樹。
なんだか悪い予感もするが…今回は美樹の提案に乗るのが最善策なのかもしれない。