コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.46 )
- 日時: 2013/05/24 23:24
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
クラス発表を見終えたあたしは、早速自分の教室へと向かった。そして、”1-B”と書かれた表札が掲げられている教室の扉を開け、黒板の方へと目を向けた。そこには、座席表が寂しく貼ってあった。
「えーっと、枝下は…名簿番号18番だから…窓側寄りの真ん中の列の…一番前!?」
うー、最悪。
超先生に見られるポジションじゃん!
と思いながらも渋々その席に着く。そして、鞄を適当な場所に置いて、ぐるりと教室内を見回す。
あ、奈緒いるじゃん!美咲もいる〜!
結構いいクラス編成だ!
そんな感想を心の中で述べていると、とある男子の声が聞こえてきた。
「友達を強調すんな!」
この声は浅井だ!
なぜか口調が荒いわね。朝っぱらから元気な事だ。
「え?友達じゃないの?」
ん?この声は聞いたことがないなぁ。外部生かな?
あたしは気になって、声のした方を向く。
すると、この世の者とは思えないくらい顔が整った少年2人とその間に挟まれて困惑している、これもまたこの世の者とは思えないくらい顔が整った少女が居た。
普段のあたしならこの光景を喜んで見物するが、今回ばかりはそうもいかない。
だって…浅井が絡んでるんだもの。
「と、友達だが、そんな普通の友達じゃなくてだな…そう幼馴染だよ!友達以上の格だ!ただの友達では容易には慣れないクラスだぞ?」
「へ〜?幼馴染ね〜?ただ、一緒にいた時間が長かっただけじゃないの?」
なんだか外部生の方が、凄い剣幕で浅井を問い詰めている。
そして、浅井は浅井で外部生を睨んでいる。
というか、今気付いたけど、あのイケメン、絶対噂に聞く、逢坂徹くんだよね?
「うっせー。時間でもなんでもいいんだよ!とにかく共有してるものが友達より幼馴染の方が多いんだ。ほら、くっだらねー話してないで、会場に行こうぜ?黒板に”自主的に行け”って書いてあるしよー?」
「そうだね。今回はお相子ってことで。それじゃあ、綾川さん一緒に行こうか?」
「真奈、お前は俺と来るだろ?」
「え?えーっと…」
外部生に綾川さん、そして浅井に真奈と呼ばれた美少女は2人の顔を交互に見ながら困り果てているように見えた。
ここで、この美少女に浅井を選ばれては困る!
そう思った私は、助け船を出すふりをして、その美少女を浅井から遠ざけることにした。
「えーっと、綾川さんだっけ?綾川さんはあたしと一緒に行くの!」
「え…?」
あたしにそう言われて、さらに困惑したような顔になる彼女。
本当、美少女ってどんな顔をしても絵になるから羨ましいわ。
そんなことを思いながら、ニコニコと彼女に微笑むあたし。
そんなあたしを見て、”こいつ誰?”とでも言いたげな蔑んだ視線を送ってくる外部生。そして、”なんでお前がここにいるんだ?”的な顔であたしを見る浅井。
もう、何よ!皆して!やっぱ美少女じゃないと駄目なの!?
そうは思いつつも絶対口には出さないあたし。
私情を隠すのはあたしにとって日常茶飯事ですからね。まぁ、それが原因で一部の人たちに好かれていないのは事実なんだけど…。
と、色々考えていると、美少女は今の状況が頭の中で整理がついたようだ。
ようやく口を開いた。
そして、その第一声は…”拒否”だった。
- Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.47 )
- 日時: 2013/06/01 11:58
- 名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)
「あの、お誘いはありがたいんですけど、私、あなたのこと、知らなくて…」
「やだ!なんて謙虚なの!?浅井の言う通りじゃん!綾川さん!あなた…絶対モテるわよ?」
恐らく、皆さん驚いたでしょう?なぜ内部生のあたしが外部生を知っているのかと。
簡単な話、先程も述べたように、中学時代に綾川という人物の話を浅井から聞いていたからだ。
「は、はい!?」
あたしの言葉に驚いて目を点にする綾川さん。
本当に、女子のあたしでも惚れそうなくらいに可愛い慌て方だ。
「もー、超可愛い!あ、それじゃあ、あたし達友達ってことで!それじゃあ、男子ども、GOODBYE!」
そう言って、あたしは綾川さんの腕をしっかり掴んで歩き出した。
無言の綾川さんに内心冷や冷やしつつ、何食わぬ顔で入学式会場へと足を進める。
そしてもう少しで式会場に到着する、というときに綾川さんが突然口を開いた。
「あの、えーっと、あなたは内部生、なんですか?」
一瞬驚いた。
あたしは綾川さんに自己紹介なんてしてないし、浅井もあたしのことを紹介した、という様子はなかった。
つまり、彼女はすべて推測であたしのことを予想したのだ。
「そうだよー?」
しかし、あたしには情報屋=常に同じ表情というイメージがあるので、それを守ってニコニコしながら、心の内を明かさずに答えた。
「凜とは友達、なんですか?」
「うん、男友達だね!あ、もしかして綾川さん、浅井と付き合ってんの!?」
自分で友達といいながら、心を痛める。
だって、友達以上の関係を、どうしても望んでしまっているから…。
だけど、あたしは”情報屋のあたし”を優先させた。
「う、ううん!そういうわけじゃないの。ただの幼馴染だよ?」
先程あたしに誘われた時より焦っている。
うーん、何だか掴めないわね。
もしかして、綾川さんは浅井のことが好きなのかな?
「そっかぁ。それは残念だなぁ」
そう言って、肩を落としたあたし。
これは情報屋のあたしを優先させた結果。
そんな自分に苦笑してしまうよ、本当。
そんなことを思いながらも、せっかく綾川さんから話しかけてくれたので、話を続けるために話題転換をした。
「あ、それよりさ!」
「はい!?」
「あぁ、そんなに硬くならなくていいよ!普通にタメでいいから!」
「た、タメですか…」
「そう!あ、そうそう!あたしの名前は枝下美樹!美樹って呼んでくれてもいいし、ミキティーって呼んでくれてもいいし…とにかく何でもいいよ!あなたの下の名前は確か…」
あたしは顎に手を添え、考える素振りを見せた。
すると綾川さんは、そんなあたしを見て慌てて自分の名前を名乗った。
「私は、真奈。綾川真奈、です」
「そうそう!真奈ちゃん!真奈って呼んでもいいかな?」
「う、うん」
「よーし、それじゃあ真奈、手始めにちょっと質問していい?」
「私が答えられることならば何でも」
「OK。えーっと、それじゃあ、浅井とは本当にただの幼馴染?」
「うん」
「逢坂くんって知ってるよね?」
「うん。今日一緒に登校したよ?」
「マジで!?やるね、真奈!」
「え?なんか不味かったかな?」
「不味いも何も、あの男子超モテモテだよー?もう噂になってるくらいだからね。学校来て数分しか経ってないってのに。やっぱイケメンは違うのねー」
一人で頷くあたし。
なんだか面白くなってきたわ!
「あ、話を戻すね!他に何か聞きたいことあったかな…?あ!思い出した。ねぇ、真奈には彼氏いるの?もしくは好きな人とか!?」
「か、彼氏なんて滅相もない!」
「えー!?真奈、すっごく可愛いのに彼氏いないの?」
「う、うん。てか、そんなお世辞要らないよー」
綾川さんはそう言って頭を左右に激しく振った。
「お世辞なんかじゃないって!…で?」
「で、とは?」
「好きな人はいないの?」
「す、好きな人!?」
「お!その反応は…居るわね。誰なの誰なの?」
「そ、それはちょっと…」
「そーだよね!また言いたくなった時に、話してくれたらいいし!」
綾川さんは一瞬意外そうな顔をした。
だが、
「うん、分かった」
と言って微笑んだ。
あたしもそれに応えるように微笑んだ。
「よーし、質問も済んだことだし、後は入学式だねー!第一印象は大切よね!」
「そうだね!」
「よっしゃ、あたし、超笑顔でいっちゃおう!って言っても、内部生だからあんまり変わり映えしないんだけどねー」
「それでも、その努力はいいと思うよ?」
「…わー!なんか嬉しい!」
「え?」
「だって、いっつもあたしの言葉って皆に流されがちなんだよねー!だから、まともに答えてくれたのって真奈くらいっていうか…」
あたしはそう言って、笑った。
もしかすると、初めて人に自分の心の内を表情に出してしまったかもしれない。
そんな心配をしながらも、それを忘れるかのように”いつもの笑顔”を浮かべた。
「ま、とにかくこれからもよろしくね!」
「うん!」
こうしてあたし達は、先程までは真奈があたしの後ろをトボトボ付いてきていただけだったのに、2人で仲良く並びながら、廊下を走り始めた。