コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.92 )
日時: 2013/06/21 23:11
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「で!どうだったのお2人さん!」

その後、大分時間が経過し、部屋の出入り禁止ぎりぎりの時刻まで帰ってこなかった優那ちゃんと涼香ちゃん。
美樹が興味津々に聞くのは当然であろう。

「どうだったの、って言われても…」
「特には…」
「ね?」「ね?」

優那ちゃんと涼香ちゃんは声を揃えながら言う。
しかし、顔ほど物を言うものはほかにない。
そう、彼女らの頬は薄らと赤く染まっていたのだ。
美樹がそれを逃すはずがない。

「でも〜、お2人さんの顔、赤かったよ〜?」
「嘘!?」

優那ちゃんが慌てて顔を抑える。

「おっと、その反応は何かあるわね。白状なさい!」

…そんなわけで、優那ちゃんが白状し始めた。
あの後、優那ちゃんと涼香ちゃんは勇気を振り絞って、篠田くんと石島くんに話しかけた。
あまり喋ったことは無かったが、意外と話が合い、話し込むことに夢中になってしまうくらいに話が弾んだ。
その後、こんだけ仲良くなったんだからメーアド交換しようぜ?という石島くんに皆が賛同して、メーアド交換を行った。
そして、そのまま部屋に帰るためにエレベーターに乗った。
すると、エレベーターに乗っている最中に受信の知らせが来た。
何だろうとメールを開けてみると、篠田くんと石島くんからの、国際通りを一緒に回らないか?というデートのお誘いだった。
それがあまりにも嬉しすぎて、暫くエレベーターから降りることを忘れて、2人で喜び合っていた、というわけだそうだ。

「なるほどね〜!それ、完全に脈ありじゃん!」
「そう、かなぁ?」

優那ちゃんが心配そうに首を傾げる。

「大丈夫だよ、優那ちゃんなら。だって優那ちゃん可愛いもん」

私が思ったまんまのことを口にすると、優那ちゃんは口を尖らせながら不満を発した。

「そんなこと言われても信じられないよ〜。だって、天下の美少女に言われるんだよ?お世辞としか思えないじゃん。真奈ちゃん、お世辞はいいよ?」
「ううん、お世辞なんかじゃないよ。優那ちゃん」
「無理しなくていいよ、真奈ちゃん。…って、真奈ちゃんって言いにくいね。真奈でもいい?」
「うん、全然いいよ?」
「それじゃあ、これからは真奈でいきま〜す。私のことも優那でいいからね」
「うん!」
「よし、それじゃあここからは〜どうしてその人を好きになったか公言していこうじゃないか!」
「イェーイ!」
「待ってました〜」

夕食前までの2人が言っていたことと、今2人が言っていることの違いに私は驚きを隠せない。
しかし、すぐにその理由に気付いた。
沖縄と言う場の雰囲気が、修学旅行という言葉が、先程まであった出来事に脈ありを感じた2人のテンションを盛り上げたのだ、と。

「はぁ。最悪だ」

1人だけそのテンションに付いていけずに

「ちょっと飲み物買ってくる」

なんて嘘を吐いて部屋を出た。
とぼとぼと財布を持ちながら自動販売機が設置してある場所まで歩いて行くと、先客がいた。
その先客とは——

「あ!綾川さん?こんばんは!」

逢坂くんだった。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.93 )
日時: 2013/06/22 21:08
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「こ、こんばんは。奇遇だね」

私は思いもよらぬ先客に動揺しながらも、平然を装って、自動販売機の前に立った。
そして、財布から小銭を取り出して、適当に飲み物を選んだ。

「あー、最悪。”さんぴん茶〜超甘甘テイスティ〜”とか有り得ないよ…」

出てきた商品に対し、柄にもなくぼやく私。
そんな私に逢坂くんはいつものさわやかな笑顔を向けてくれた。

「ははは。さっき、何かあったの?」
「そ、そんな大したことじゃないの」
「そう?だったらいいけど…」

そう言って、少し頬を赤らめた逢坂くんは目を伏せた。
そしてそのまま

「あんまり無理せずにね」

と言って、その場を去って行った。
私は突然の逢坂くんの対応の変わりように、少し驚きながらも私もその場を後にした。

——翌日、私達はガマへやってきていた。

「私は、もううんざりです!米軍基地問題は戦後から何も変わっていません!基地経済効果、とか言って政府は逃げていますが、そんな効果、今では5%にも満ちません!今でも…」

そう私達に熱く語る比嘉さん。
この方は、戦争時や戦後の話を詳しく話して下さる”風の友の会”という会の中の会員のおばさんだ。
その、あまりにも熱烈な話方、そして、悲惨な過去に男女問わず涙する者も多かった。
そして、その人の話が終えた後は、バスに乗って別のガマ前へ。
そこのガマでは、実際に入ることを許可されているため、皆で懐中電灯を持って中へ進んでいった。
そして、立ち入り禁止ぎりぎりのラインまで来た私達はインストラクターさんの指示に従って、一斉にライトを消した。
すると、先程まですぐ隣で笑っていた美樹の姿さえも分からないほどの漆黒の闇が襲ってきた。
その想像を絶するくらいの暗さに思わず、すぐにライトをつけてしまう者もいた。

「…はぁ。暗かったね」

珍しく美樹がげんなりした様子で言う。

「美樹は暗いところ、苦手なの?」
「ま、まあね。ちょっとぐらい暗くても全然大丈夫なんだけど、前も後ろも見えなくなるようなさっきみたいな暗さはちょっとね…。発狂しそうだった」
「そっか。でも、今日の平和学習はこれで終わりだよ?あとは、ホテルに帰るだけだしね」

私はそうやって美樹を元気づけた。
そして、バスに乗り込もうとしたとき、私は聞いてしまった。

「なぁ?聞いたか?逢坂が綾川さんを狙ってるって話」
「嘘だろ!?俺も狙ってたのに!」
「お前は120%無理だ」
「あ、てめぇ!」
「おい、痛てぇって!」

逢坂くんが私のことを、好き?

そんなこと頭では有り得ない、って分かっているのにどうしても期待してしまう自分がいる。

ただ逢坂くんが初めて話した女子が私だったから、今でもよく一緒にいてくれてるだけできっとそんなんじゃ…。
本当にそう?
それにしては、他の女子に比べてよく特別扱いをされてなかった?
そ、そんなことはない、はず…。

一人自問自答を繰り返す私。
そんな私の様子が変だと気付いた美樹は、すぐにバスの階段で止まっている私を引っ張り上げて無理やりバスに乗車させた。

「またあのこと〜?」

美樹が暢気に語調を伸ばしながら私に尋ねる。

「う、ううん。別のこと」
「あ!もしや、もう真奈の耳に入ったの?」
「え?美樹も知ってるの?」
「そりゃあ、まあ。あたしが思ってるので間違いなければ」
「ちょっと耳打ちして」

そう言って私は美樹の口元に耳を寄せる。
すると、美樹が聞き取れるか聞き取れないかの声で

「逢坂」

と呟いた。
私はその言葉に顔を真っ赤にしながら、首を縦に激しく振った。

「やっぱりね〜」
「い、いつから知ってたの?」
「昨日の夜。メールでの報告があった」
「さ、さすが情報屋」
「まぁ、普通に信憑性高いし、今のところのあたしの判断では、あなたたち2人は両想いですね」

最後の部分は隣の凜や逢坂くんに聞こえないように、呟くように言った美樹。
その言葉を言ったあとの美樹は、本当に意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「むー、からかわないでよー」
「からかってないわよ。協力する!」

そう言って、大きな目でウィンクを決める美樹。
そんな美樹を見て、顔を真っ赤にしながら私は車窓へと目を向けた。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.94 )
日時: 2013/06/23 09:56
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

そんなこんなで2日目は終わりを迎えた。

「ねぇー、見てー。さっき、大谷が真希ちゃんに告白したんだって!」

涼香ちゃんが携帯の画面を私達に見せびらかしながら言う。

「け、結果は?」

優那が意気込んだように尋ねると、涼香ちゃんは満面の笑みで

「見事玉砕!」

と言った。
その言葉に肩を落とした優那。
優那は優しいから、大谷くんのことを思ってそうしたのと、あともう1つ、そうしたのには理由がある。

「だーいじょうぶだって!優那が玉砕なんてするはずないでしょー?」

涼香ちゃんは溌剌とした笑みで、優那の沈んだ顔を笑い飛ばす。
そう、優那は3日目に開催されるレクリエーション終了後、石島くんに告白する、と先程宣言したところなのだ。

「そ、そんなわけないよ。やっぱりやめようかな…」
「だ、駄目よ!」

美樹が力強く遮った。

「あ、その…詳しくは言えないんだけど、優那は大丈夫」

そう言って優しく微笑んだ美樹。
その笑顔を見て安心したのか、優那は「うん」と頷いて、そのままベッドへ潜りこんだ。

「それじゃあ、あたし達も寝よっか!もう1時だし…」
「あはは。凄い夜更かししたね」

涼香ちゃんが眠いのか力なさげに笑う。

「そうだね。それじゃあ、おやすみなさい」

私がそう言うや否や2人の寝息が聞こえてきた。

——翌日

「いやー、今日は選択種目の体験日だっけ?超楽しみだぁ——!」

涼香ちゃんがトランクから今日着る服を引っ張りながら、楽しそうに笑っている。

「皆は何選んだの?」
「あたしはシーカヤック!」

涼香ちゃんが手を挙げながら元気いっぱいに答える。
どこぞの小学生ですか、と突っ込みたくなるのは抑えた。

「私もそれ!」

優那も嬉しそうに言う。

「あ、じゃあ、もしかしてこの部屋全員…シーカヤックってこと?」

美樹が少し驚いたような表情で言う。

「そういうことだね〜。私も美樹もシーカヤックだし」

私が美樹の問いに笑顔で答えると、美樹の顔にも笑顔が広がった。

「やったね!向こうでも会えるじゃん!」
「だね!」

美樹と涼香ちゃんが手を取って笑い合う。

「こんだけ、修学旅行楽しんだの初めてかもしれない!あ、そーだ!まだ真奈ってさ、あたしのこと涼香ちゃんって呼んでるじゃん?」
「え?うん」

突然どうしたんだろう?と首を傾げる。

「あたしも呼び捨てにしてよ!涼香って」
「…うん!」

私は力一杯、そして今見せられる最上級の笑顔で頷いた。

「や、やばい…。女のあたしでも今のは惚れそうだった」
「私も」

涼香と優那が顔を伏せながら言う。
私は何がヤバいのか分からないので、美樹に助けを目で求めるが…

「自分で考えなさい」

と言われてしまった。

「って、こんなことしてる場合じゃないじゃん!」

美樹が部屋に備え付けの時計を見て、慌てる。

「もう、朝食始まる10分前だよ?早くいかなきゃ不味いよ!」
「本当だ!」

皆は急いでスリッパから運動靴へと履き替える。
ホテル内でスリッパでの移動は禁止されているからだ。

「よし、行くよ!」

美樹の掛け声と共に扉を開け放って駆け出した私達。
そしてなんとか無事に朝食までに間に合った私達は、適当に近くにあったテーブルに席に着いた。

「間に合ったー」

美樹が心底よかった、なんて顔をしながら言うと、他の部屋のメンバーの子がくすくす笑う。

「美樹ちゃんって可愛いよねー」
「ど、どこが」

あまり言われなれないのか、非常に動揺している美樹。

こんな美樹、滅多に見られないよ!

「んー、ルックスも含めて全部、かなー?ね?」
「うんうん」
「る、ルックス!?」

美樹はもう頭から湯気が出そうなくらいに顔が真っ赤になっている。

「その、お、お世辞は要らないから…」

そう言うと、朝食を口にかき込み始めた美樹。
本当に微笑ましい光景だ。
きっと、今美樹の頭の中ではそんなことを凜に言われたい、と言うような感じだろう。
まさに恋する乙女だ。

「ごちそうさまでした!」

美樹は足早に席を立って、一人でエレベーターの所へ向かおうとしたので、私は慌てて美樹の後を追うために席を立った。
すると、涼香は

「あたしらまだ食べれてないし、もう少ししたらいくねー」

と言って、席に座ったままだった。

「わかった!」

私はそれだけ言うと、美樹を追いかけた。