コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.96 )
日時: 2013/08/02 18:26
名前: 華憐 (ID: xDap4eTO)

「美樹、待って!」

私は食堂をあとにした後、ひたすら走り続けて、ようやく美樹に追いついた。

「……真奈」

一瞬躊躇いながらも私の方へと顔を向けた美樹。
彼女の顔は、熱があるのではないかと心配になるくらいに赤く染まっていた。

「あたし、あたしね…」

勢い余って涙まで流しだしそうな美樹を慌てて止める。

「そんなに急ぐことないよ?部屋に帰りながらゆっくり聞く」
「…うん」

ようやく落ち着いたのか、深呼吸をした後、一緒にエレベーターに乗って、部屋へと向かった。

「それで、急にどうしたの?走り出して。まぁ、なんとなくは察するけど…」
「真奈は賢いからね〜。多分、真奈の思ってる通りだと思うよ。…だってあたし、可愛いとか言われてなかったし、それに何より…」
「何より?」
「その会話をしてる間、浅井が、こっち見てたの…」

そう言って、また顔を赤く染める美樹。

本当に可愛い人だなぁ。これが恋する乙女ってやつだね。
…あれ?
じゃあ、私は逢坂くんに恋してないの?
あんまりここまで顔が赤くなった覚えは…ないんだけど。

一人でそんなことを考え始めて頭が混乱しそうになってると、美樹が心配そうに覗き込んできた。

「大丈夫?」
「う、うん。ちょっと自問自答を」
「自問自答?」
「あ、いや、なんでもない!…それより、今日は米軍基地見に行くんだよね」
「急にどうしたの?真奈」
「いや、その、沖縄についてよく学べる機会だな、と思って」
「うん、そうだね」
「…」
「…」

沈黙が訪れてしまった。
私は一人でパニック状態に。

どうしよう、どうしよう?
何か話さなくちゃ。
でも、何を?
何でもいいってば!

「真奈」
「は、はい!」
「無理して話そうとしなくてもいいんだよ?」
「え?それってどういう…」
「真奈はあたしの一番の親友なんだ。だから、何も話さなくたって楽しいし嬉しいし幸せだよ?」

そう言って、柔らかく微笑む美樹。
そんな彼女を見ていると、自然と涙があふれてきた。

「み、美樹〜!」

私は美樹に抱きついた。
友情という絆、美樹という存在を確かめるために。

「ちょっと、真奈!苦しいわよ」

それでも私は彼女から手を離さない。

「真奈〜」

美樹は苦しい苦しいと言いながらも、声は笑っている。
これは苦しくない、というサインだ。

「いい加減にしなさ〜い。あたしに抱きつくくらいなら、逢坂に抱きつきなさいよ」
「え!?そ、それは駄目だよ!」

美樹に言われて、一瞬自分が逢坂くんに抱きついている想像をしてしまった私は慌てて美樹から離れる。

「ふ〜!やっと離れた」
「か、かもしたの?」
「どーでしょーねー?」
「あー、もう!それじゃあ、美樹こそ凛に抱きつけばいいじゃん」
「な、何をー!?」

2人で墓穴を掘るようなマネばかりをし、喧嘩になりそうになった。
だがその瞬間、涼香と優那が部屋に帰ってきて、喧嘩になる前の険悪ムードは一転。

「よっしゃー!今日は米兵のカッコイイ人見つけるもんね〜!」
「涼香。篠田くんは?」

優那が真面目に突っ込みを入れる。
しかし、そんな真面目な突込みに、涼香は不真面目に答える。

「えー?それとこれとは別問題だよー」

というか、お2人さん。
米軍基地に行くのは、沖縄の人が今抱えている問題の現状を知るために行くんだよ?
まぁ、米軍基地に実際に行ったことがないから、そういう考えになってしまうのも無理はないけど…。
と、行っても私も今回初めて米軍基地に行きますが。

「同じです!」
「えー?でもやっぱアメリカ人はカッコいいよ!」
「そりゃあ、外人さんだからカッコいいけどさ…」

こんな会話が部屋を出るまでずっと続いた。

Re: 恋桜 [Cherry Love] ( No.97 )
日時: 2013/07/04 17:23
名前: リア (ID: xDap4eTO)

ビュオーン

物凄い轟音と共に私たちの頭上を飛んでいく戦闘機。
戦闘機の翼の部分には、遠目にもわかる黒字で”USA”と書かれていた。

「超煩いんですけど!」

涼香が耳をふさぎながら口をへの字にして言う。
無理もない。
耳がキンキンする。

「これが毎日続くんでしょ?沖縄の人たちって大変だね」
「でも、あたし達…何にもできない」

美樹の言葉で一気にその場の雰囲気が下がった。
しかし、これは美樹の所為ではない。
本当に事実なのだ。
認めたくはないが、私達には何もできない。
憲法改正なんて内閣しか出来ないし、外交だって外交官等の特殊な人しか出来ない。
私達にできることなんて、本当に雀の涙ほどしかないのだ。

「カッコいい人見付けるどころじゃないね。これ」
「だから私は言ったじゃない」
「そーだったっけ?」
「そーです!」

飽きないなぁ、この二人を見てると。

そんなことを思いながら、二人の会話を聞いていると、ガイドさんから招集がかかった。

「あー、やっとこっから離れられるー」

美樹はそう言って、手をひらひらさせた。
私はそんな様子にくすりと笑って

「ようやく、沖縄の人が言ってる意味、理解できたね」

と言った。
すると、美樹が急に真面目な顔になって

「そうだね」

と答えた。

「ほらほら、2人とも早く行って〜。後ろ詰まってる〜」

涼香が私達の腰を同時にぽんぽんと軽く押す。
私達はその言葉でようやく我に返り、慌てて前へと進み始めた。

—バス内にて

「皆さん、嘉手納基地はいかがでしたかー?」
「最悪でしたー」
「本当!煩かった!」

バスガイドさんの声に応えて、多くの生徒が口々に感想を述べた。

「そうですよね。私達沖縄人は毎日この音に苦しめられています。例えばですね…」

沖縄のガイドさんの話はとにかく長い。
話題が尽きることがない。
でも、それはいいこととも言えるが同時に生徒が飽きやすくなる原因でもある。

「…皆さん、私の話聞いてますかー?私、左を見てくださいって言いましたよね?なんで右見てるんですか」

だんだんとガイドさんの話を聞かずに、友達とのゲームや話に夢中になっていった生徒たちにガイドさんは若干キレ気味。
多分彼女の内心は”なんでこんなガキに敬語使ってわざわざ説明しなきゃいけないのよ。有り得ない”というような感じだろう。
何となく顔を見ていれば察しが付く。
そしてそろそろ本当にキレるか、という所まで行ったところで、選択したものを体験できる場所に到着。
バス運転手さんに感謝だ。

「…到着しました。忘れ物のないように下車してください」

ガイドさんの不服そうな顔を横目に皆が一斉にバスを降りる支度をし始めた。
そして、バスの扉が開くのと同時に順々に下車していった。