コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】更新! ( No.12 )
- 日時: 2013/07/30 13:56
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
episode2 「私はまだ……」
「りな、俺、好きな奴が出来た!」
「……へえ」
幼馴染の由紀にそう告げられた。
「もっと反応しろよ!」
「どう反応すればいいのよ」
だって、どう反応すればいいのか分からない。
「北条咲ちゃん、めっちゃ可愛くね!?」
由紀が口にした名前は学年でもすごく「可愛い」と言われる咲の名前だった。
由紀は「協力しろよ」と告げて、私の家から隣の家に——つまり自分の家に戻って行った。
「……まさか由紀に好きな人が出来るなんて……」
力が抜けていく。
まさか由紀に好きな人がいるなんて思わなかった。
別に私は由紀のことなんてどうとも思っていない。だけど、なぜかよく分からない、モヤモヤした気持ちで一杯になった。
「りなちゃん、おはよう!」
「あ、おはよ、咲」
次の日学校へ行くと、咲が声をかけてきた。
「……あのさ、咲は好きな人とかいる?」
「え!? ど、どうしたの急に……いないよ?」
咲は私の言葉に動揺し、頬を赤らめた。「いない」なんてのは嘘で本当はいるのだろう。
あえて、それが誰かは聞かなかった。
なぜかは分からない。でも、聞いてしまったら後悔する気がした。
放課後、私は学校へ宿題を置いてきてしまったことを思い出し、下校の途中で学校へと戻った。教室に入ろうと扉を開けようとしたが、手は止まった。
「さ、咲ちゃん、俺、実は咲ちゃんのことずっと好きだったんだ」
「え……嬉しい! 実は私も……」
二人は教室でそういう会話を交わしていた。幸せそうな笑顔だった。それとは逆に私の顔はどうなっていただろう。
教室を去り、私は振りかえる。教室から離れたところまで行き、駆け足で玄関へと向かった。
苦しかった。
今まで気付かなかった。
きっと私は由紀のことを……。
この先は言わない。言ってしまったら必ず後悔する。
私はまだ、愛を知らないでいたい。
登場人物
佐藤りな rina satou
高橋由紀 yuki takahasi
北条咲 saki houzyou