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Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】エピソード4更新! ( No.23 )
日時: 2013/05/25 20:38
名前: 朔良 (ID: WUYVvI61)

 episode5 「山田君の好きな人」

 クラスメイトの山田君はモテモテです。

「ねえねえ、祐也! 日曜日カラオケ行かない?」
「いいけど、真衣ちゃんも一緒ね? もう約束しちゃったから」

 山田君は女の子に囲まれながら楽しそうに話していた。
 明るくて、カッコイイ山田君はもちろんモテる。私も、例外ではない。
 あまり目立つ方ではないタイプの私にも優しくしてくれる、話しかけてくれる。
 ……同情かもしれないけど。

 だけど、山田君は本命はつくらない。噂では、本命はいるという風になっている。


 ある日の放課後、私は図書委員の仕事で学校に残っていた。先生に「帰っていい」と言われ、教室に鞄を取りに行く。

 教室の扉を開けると、そこには山田君がいた。

「……山田君、こんな時間に何してるの?」
「特に意味はないよ、森川さん?」

 じゃあ、なんでいるのだろう。
 

「……今日の夕陽、綺麗だよね」

 山田君は言った。意外とロマンチストであることは知っている。

 夕陽のせいかもしれない。
 美しいオレンジ色を放つ夕陽は、人間の心を正直にさせる。雰囲気的なものなのかもしれない。
 
「……山田君って、好きな人いないの?」
「いるよ? 女の子全員好き」

 微笑みながら山田君は言う。
 私は、抑えられない気持ちに素直になる。

「……私、山田君の本命の人になりたいです」

 山田君は目を開き、そのあと、私の方に近づいてくる。私の前に来ると、胸まである髪を触り始めた。

「……なんでこんな時間まで学校にいたと思う? この時間って、図書委員の人しか残ってないよね」
「それって……」
 
 人差し指を唇にあてて、私を黙らせる。

「静かに、してね」

 ——二つの影は重なり、そして夕陽は沈んでいった。




 登場人物
  森川那流 naru morikawa
  山田祐也 yuuya yamada
 
 
  明るいテイストになりました。いかがでしたでしょうか?