コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】エピソード7更新! ( No.46 )
- 日時: 2013/07/07 10:59
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
episode8 「小さな恋のキューピット」
私のお気に入りのカフェ「Matryoshka」に今日も友達のみくと来ていた。
頼むメニューを決めたので、目線を店員さんの方に送る。目が合うと、にっこり笑い、こちらに向かって来てくれる。
「——ご注文がお決まりでしょうか」
「はい……キャラメルマキアートとホイップカフェラテをお願いします」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
そう言い、去っていく。
「……大好きだよねー雛未は大波さんのこと」
「な、なに言って……」
急に顔が熱くなる。
「隠しても意味ないってば」
からかうような顔でみくは言った。
——大波さんとはさっき注文を取ってくれた人のことだ。
すごくカッコ良くて、彼目当てで来る女の子もかなりいる。
「でもさ、大波さんて大学生くらいでしょ? 彼女いるかもよ?」
私達は高校1年生。相手にされないことも分かっている。
「分かってるよ……でも……でもさぁ……」
はーとため息をつく。
「うーん……頑張っても良いと思うけど……」
そうみくが言った時、4歳くらいの男の子が二人駆けてきた。一人は背を向けて走っている。
「あぶな……きゃっ!」
みくが「危ない」と言った時、すでに遅かった。
男の子が私達のいたテーブルに背中をぶつけ、コップが落ちて、割れてしまい、みくに水がかかってしまった。
「みく! 大丈夫?」
「だ、大丈夫だけど……」
苦笑いで言う。水を滴らせているし、大丈夫ではないだろう。
「お客様、こちらで着替えをご用意させて頂きますので、あちらの部屋へ……」
女のスタッフさんが近寄り、みくを誘導する。
あの男の子とそのお母さんらしき人物はみくに謝っていた。みくは「もう大丈夫ですから」といい、スタッフさんの方へ向かった。
私は割れてしまったコップに手を近づける。
その時、私の手に後ろから誰かの手が重なった。
「——危険ですので、お任せ下さい。お客様」
「え……」
その声ですぐ分かった。
大波さんだ——。
大波さんは私の手から離れ、私の正面へ来る。
「お気づかいありがとうございます」
微笑み、ホウキとチリトリを持ってきて来てくれた。
「す、すみません……」
……みくには悪いけれど、あの男の子に感謝した。
大波さんと少しだけ近付くことができたから。
「——では、ゆっくりとお過ごし下さい、雛未さん」
「——え?」
私がそう言うと、大波さんは「しまった」という風に口を隠した。
「どうして、私の名前を……」
彼は少し頬を染めながら言った。
「いつも……ここを訪れた時、俺のことを見つめてましたよね。それで気になって……お友達が名前を呼んでいたのを聞いて……」
大波さん、気付いていたんだ……。
私達は二人で頬を染めた。
今も私は大波さんを見つめてる。
だけど、大波さんも私を見つめてくれている。
ありがとう、小さな恋のキューピットさん。
登場人物
槙野雛未 hinami makino
大波慎司 shinji onami
柳みく miku yanagi