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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】エピソード8更新! ( No.54 )
- 日時: 2013/07/12 20:58
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
episode9 「弱虫の私」
好きだよ。
何度も願ったんだ。
弱虫の私は願うだけ。
「奈緒! お前今日俺と日直だろ?」
「え? 真夏とかあ……最悪」
「失礼な奴だな」
真夏は持っていた学級日誌で私の頭を軽く叩く。
それだけでキュンとくる。
放課後の教室で、私達は学級日誌を書いていた。
「なあ、美和ちゃん、どういう男がタイプなんだろう?」
「……知らないよ、美和に聞けばいいじゃん」
「聞けるわけねえだろ! お前が聞いてくれればいいのに」
……そんなこと言わないでよ。
私の気持ちなんて知らないくせに。
真夏は美和のことが好きだ。
私の想いは絶対に真夏には届かない。
「俺、告白してみようかなあ」
「……うん」
やめてよ。
「どう思う? 奈緒」
「さあ……」
簡単に名前呼ばないでよ。
「なんか、そっけなくね?」
「別にそんなことないよ」
そっけなくしてるんだよ。
いっそのこと、私のこと嫌いになってくれればいいのに。
そしたらきっと——
そんなことを考えている時、私の額に何かが当たった。
「……飴?」
「そ、元気ないからさ。それ、好きだろ?」
……馬鹿。
なんで気付くの。
なんで分かるの。
なんで諦めきれないの。
「真夏は多分成功するよ?」
「根拠もないくせにそんなこと言うなよ」
口を尖らして真夏は言う。
そんな仕草も可愛いけれど。
「告りなよ、弱虫君」
「な……むかつくなあ」
……嘘。
本当の弱虫は私なんだよ。
なにも出来ない。
友達でいられなくなることも避けて「友達」でいる。
ずっとずっと、「友達」のままで。
それでいい。
それが私の恋だから。
登場人物
小田原奈緒 nao odawara
松橋真夏 manatu matuhashi
遠藤美和 miwa endou
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