コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】エピソード9更新! ( No.62 )
- 日時: 2013/07/30 14:01
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
episode10 「キンモクセイの詩」
——僕、藍川太陽は音楽プレイヤーを手にし、自分の部屋のベットでラジオを聞いていた。
寝る前に必ず聞いているラジオだ。
人気アーティスト、期待のアーティストの新曲を紹介している番組だ。
『本日のゲストは大橋美雪さんです』
『よろしくお願いします』
僕は身体が起き上がってしまうほど興奮してしまった。
大橋美雪——人気の現役大学生アーティストであり、僕の幼馴染。今ではもう雲の上のような存在だけど、ずっと大好きな女の子だ。
『新曲のタイトルが「僕の花」ということですが……この歌にはどんな意味が込められているんですか?』
『子供の頃に思った気持ちを書きました。一人の男の子のことなんですけどね』
『素敵ですね。では、歌詞にも注目してお聞きください。大橋美雪さんで「僕の花」』
僕は耳を澄ました。
君は覚えていますか?
君が好きだと言った花
それは名もない花だけど
とてもとても美しい
僕は思った。
これは、もしかしたら——……
歌は続く。
「僕が好きなのはあの花だ」
そう言うと君は笑って言ったよね
「花言葉は真実、君にぴったりだ」
でも知ってるかい?
あの花には「初恋」という
意味もあるんだよ
もう会えない君
元気に暮らしてますか?
僕の初恋は君だよ
今でも好きで好きで会いたいけれど
君は覚えててくれるかな?
もしかしたら——……いや、これは僕と美雪の歌だ。
美雪は確かに「あの花が好き」と言った。僕は道端に咲いていた青い花を綺麗だ、と言ったのだ。
大好きだよ
今もし君に会えたなら
僕は想いを伝えよう
美雪も僕と同じ気持ちだったのだろうか。
もどかしい想いを抱いていたのであろうか。
歌詞には一切花の名前は出てこない。
だが、僕には分かる。
あの花の名前は「キンモクセイ」だ。
もし、この町に美雪が一度でも戻ってきたら必ず言おう。
「僕も美雪と同じ気持ちだよ」と。
キンモクセイ 花言葉……「謙虚」「真実の愛」「初恋」
登場人物
藍川太陽 taiyou aikawa
大橋美雪 miyuki ohashi