コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君はまだ愛を知らないでいる【短編集】7/21更新 ( No.84 )
- 日時: 2013/07/25 18:08
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
episode14 「センテッドゼラニウム」
思いがけない出会い。
それは、まるで私達のようだったね。
「あれ……君……」
「え、あ……黒崎さん……ですよね?」
高校の入学式、出会ったのは友達の真白の親が経営するカフェでバイトとして働いている黒崎さんだった。
大人っぽく見えるし、てっきり大学生かと……なのに、ネクタイの色は青と白のボーダー。つまり、2年生だ。
「うん、君は真白さんの友達だよね?」
「はい」
覚えててくれてた——。
うっかり顔がほころびそうになる。
「改めて——黒崎彪真です、よろしくね」
「吉高悠です、よろしくお願いします」
丁寧に挨拶してくれる。そんな姿にも心は揺れ動いてしまうのだ。
叶わないって分かってるのに。
私は「何か」を期待して「何か」を望んでしまっている。
黒崎さんには——恋人がいるのに。
何度かお店で見ていた。すごく綺麗な女の人。
黒崎さんにお似合いの人だった。
カランカラン……。
真白が部活で遅いので、一人で黒崎さんのいる場所へと向かう。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
黒崎さんは笑いながら席へと案内してくれる。
「あのさ……女の子って花貰って嬉しい?」
こっそりと黒崎さんが聞いてくる。
「……彼女さんにプレゼントするんですか?」
顔が赤くなった黒崎さんを見て、胸が痛くなる。
「嬉しいものじゃないですかね?」
頑張って笑顔でいよう。そう思いながら伝える。
「悠ちゃんは花で何が好き?」
「私……ですか」
なんで、私のを聞くの。
へんに期待させないで。
「センテッドゼラニウムが好きです。花言葉は——」
「好み、思いがけない出会い、真実の愛情、決心……でしょ?」
私が続けようとした言葉を遮り、代わりに黒崎さんが言う。
曇りのない笑顔で笑う。
「俺もその花好きなんだ。奇遇だね」
——こんなに好きなのに。
どうして、どうして……
決心、しよう。
諦められないなら、振られてしまおう。
それなら、きっと、諦められるから。
無理なんだって実感できるから。
無理やり、終わらせよう。
センテッドゼラニウム 花言葉……「好み」「思いがけない出会い」
「真実の愛情」「決心」
登場人物
吉高悠 haruka yoshitsaka
黒崎彪真 hyuma kuroshaki