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　episode15　「愛より深く」

　私とお兄ちゃんは血が繋がっていない。
　私は母の連れ子で、お兄ちゃんは父の連れ子だ。
　どうせなら、血が繋がっている方が良かったのかもしれない。
　繋がっていたら嫌でも諦めた。繋がっていないからこそ、まだ望んでしまうんだろう。

　お兄ちゃんの寝顔を見つめる。
　昨日は両親が出張だったため家に二人だった。
　だから、一緒に眠ったのだ。お兄ちゃんのベットで。
　また、見つめる。
　見つめるだけ。触れることなんてない。
「ん……未奈？」
「おはよう、お兄ちゃん」
　お兄ちゃんが目を覚ます。朝が弱いからか、虚ろな目をしている。
「うん……おはよう」
　枕に顔をつける。私の方を向きながら。
「……触りたいなあ」
　青みがかった瞳で私の目を見つめる。
　それだけで涙が出そうになってしまう。
「……うん」
　私とお兄ちゃんの手が触れそうになる。
　触れそうになるだけで、触れることはない。
　これは私達の気持ちを表しているみたいだ。
「未奈、ずっと一緒にいろよ」
「……お兄ちゃんこそ。離れたりなんてしないでね」
　そう言い合いながら私達は笑う。

　溢れるほどの想いが
　痛いほどの想いが
　涙に変わる
　
　言葉にならない愛が
　形にならない愛が
　私達を締め付ける
　
　愛なんていらない
　ぬくもりがあればそれでいい

　——愛より深い想いで繋がっているのだから。



　登場人物
　　春野未奈　mina faruno
　　春野葵 aoi faruno