ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

　episode16　「青薔薇の夢」

　もし、不可能が可能になるのなら。
　私はきっと彼の胸に飛び込むのであろう。

「真菜！　お前、はやく起きろよ！」
「ん……賢治？」
　私は賢治の声で重い瞼を開く。どうして彼がここにいるのだろう。それより、ここはどこなのだろう。
　柔らかいベットの上で私は寝ていたらしい。窓と扉、そして花瓶に飾られた青い薔薇があるだけで、他には何もない部屋。一体、ここはどこなのだろう。
「なあ、突然なんだけどさ、俺、お前のこと好きなんだよ」
「……え？」
　思いがけない言葉だった。
　だって、賢治には理紗子という彼女が——。
「理紗子とは別れたよ」
「な、なんで思ってること分かったの？！」
　心を読まれた。
　ここはそんなにファンタジックな世界なのか。
「分かるよ。……いつも見てたから」
　なんでそんなこと……。
　そんなの、私だよ。
　いつもいつも見つめて、勝手に理紗子に嫉妬して。
「理紗子は……どうするの？」
「理紗子とはもう別れるよ。お互い疲れるんだ」
　賢治の言葉に甘えて「私も」と言おうとした時、私の淡い夢は終わった。

「……夢？」
　そこはいつもの私の部屋で、いつも通りの朝だった。
　馬鹿みたいだ……と思いながらスマホを開く。そこには新着メールが一件あった。それは賢治からだった。



『好きだ。俺と付き合ってほしい』
　

　——夢じゃない？
　いや、あれは確かに夢だった。
　
　私の頭に焼きついて離れないのはあの青い薔薇だった。


　青薔薇花言葉　「奇跡」「神の祝福」「夢叶う」
　登場人物
　　松田真菜　mana matuda
　　畑村賢治　kenji hatamura
　　鎌田理紗子　risako kamada