コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

彼女との遭遇【7】 ( No.12 )
日時: 2013/05/06 17:17
名前: ゴマ猫 (ID: 2qC9xcD7)

翌日の昼休み。
俺は教室で羊にもらった似顔絵的な物を眺めながら、焼きそばパンを頬張っていた。

「やっぱり情報が少ないよな……」

描かれている似顔絵は上手いのだが、和紙に墨で描いたような絵で、これで探すのは至難の業だろう。

「桜井。何見てるんだ?」

不意に背後から声がかかる。

「うわっ!!……なんだ葉田か、驚かさないでくれよ」

声の主は、葉田流星。
入学してから一番最初に仲良くなった友達だ。
クールなイケメンさんだが、それを気どったりしないところが魅力の1つだったりする。

「悪い。桜井が昼休みに寝てないなんて珍しいもんだから……ん? その似顔絵、桜井が描いたのか?」

葉田は物珍しそうに、俺の持ってる似顔絵に目をやる。

「あぁ〜、いや、俺の知り合いが描いたんだよね」

羊を知り合いと呼べるかどうかは微妙ではあるのだが。

「へぇ、上手い絵だな。どことなくだけど、橘さんに似てる気もするな」

葉田は感心したように絵を見て頷く。
ん……?
今重要な事言わなかったか?

「お、おい葉田。今何て言った?」

「どことなく橘さんに似てるって」

なんという……灯台下暗し。
同じ学校の、同じクラスなんてもはや運命的じゃないか!! 眠りの神様ありがとう!!
そうとわかれば、善は急げだ。

「橘さんは今どこに?」

「さぁな。彼女、昼休みはどこか別の場所でお昼食べてるみたいだぞ?」

むむっ。
今すぐ会ってこの気持ちを伝えたいって言うのに。
俺は葉田の話しをそこまで聞くと、重要人物に会いに行くため教室に居る女子に聞いてみた。

「あのさ、橘さんってどこに居るか知らない?」

「橘さん? うーん、昼休みが始まると居なくなっちゃうからよく知らないんだよね」

その後も色々な人に聞いてみたが、いずれも知らないという反応だった。
すぐ近くに居るのに会えないってのはもどかしいもんだ。
仕方なく昼休みは諦めて、放課後帰る前に話しをする事にしたのだった。

「橘さん!!」

チャイムが鳴ると同時に俺は橘さんに話しかけた。

「ひゃうっ!! な、何か用ですか?」

急に話しかけたもんだから驚かせてしまったらしい。
橘 菜々(たちばな なな)フワフワと揺れるショートカットの黒髪に、まるで小動物のように小柄で可愛らしいオーラが出る女の子だ。
同じクラスで名前は知ってるけど、接点はほとんどなかった。

「うん。橘さんに話したい事があって。でもここじゃちょっと話しづらい事なんだ」

俺、羊に呪いをかけられてるんだ。なんて教室で言ったら、変な奴と思われるしな。
いや……別の場所で言っても変な奴である事に変わりはないんだけど。

俺がそう言うと、橘さんは顔が真っ赤になり、慌てたような態度になる。

「あ、あの、わ、私、いきなりそういうのは……ごめんなさい〜!!」

橘さんはそう言って、もの凄い勢いで教室を飛び出していってしまった。
そういうのって何?

「ちょっと!! 橘さん!! 大事な話しがあるんだよ!!」

そんな俺の声もむなしく、橘さんは戻ってくる事はなかった。

「桜井。告白はもっとスマートにやった方が良いぞ」

葉田はそう言って俺の肩をポンと叩く。
周りを見ると、クラス中が俺を凝視していた。

あれ? なんか誤解された?

呪いを解くのはそう簡単にはいかないらしい……。