コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 彼女との遭遇【8】 ( No.13 )
- 日時: 2013/05/06 17:27
- 名前: ゴマ猫 (ID: 7ZYwzC8K)
放課後の帰り道、黄昏に染まる街並みを見ながら、俺は深いため息をついていた。
「はぁ〜……第一印象最悪じゃないか」
彼女、つまり橘 菜々を心の底から笑顔にする事。
それが俺の目標である。
俺は羊神社に居る謎の羊に失礼な事(俺はまったく記憶にない)をしてしまって呪いをかけられた。
それを解くための条件が彼女。
まさに重要なキーポイントだ。
その彼女に初っぱなからドン引きされて、逃げられてんじゃ目も当てられない。
「もとはと言えば、あの羊が意味わかんない理由で呪いなんてかけるのがいけないんだよ」
ただ1つ気付いた事がある。
相変わらず他の事は忘れてしまうけど、羊に頼まれた大事な用件がらみの事は忘れないらしい。
どういう理由かはわからないんだけど。
「とにかく、橘さんが何をしたら喜んでくれるのかってのがポイントだよなぁ〜」
俺と話してくれるのか? という疑問は残るが、諦めてしまう訳にはいかない。俺の未来がかかってるからな。
「……何してんの?」
いつの間にか家の前に着いてた俺は、扉を開けた杏に未確認生物でも見るかのような視線をむけられた。
……多分ひとり言を言ってたのを聞かれてたのだろう。
「いや、悩み事がつきなくてさ……あは、あはは……」
「いつも、寝てばっかの洋一に悩みなんてないでしょ?」
杏の鋭く尖った言葉が俺を突き刺す。
「失礼な。俺にだって悩み事くらいあるぞ」
「はいはい、別に興味ないから。それより買い物行ってきてよ」
軽く流して、用事をおしつけてくる杏。
杏の冷ややかな態度は、傷口にそっと塩をぬりこむようだ。
「……買う物ってなんだよ?」
「ラム肉。今日ジンギスカンにするんだってお母さんが言ってた」
その後、結局買い物に行ったのだけど、買う物を忘れてその日の夕飯はただの野菜炒めになったのだった。
杏に怒られたのは言うまでもない。
羊なんて嫌いだ……。