コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

??? ( No.137 )
日時: 2013/08/28 18:35
名前: ゴマ猫 (ID: vysrM5Zy)


「お前も甘いね。あの少女の記憶だけ消さないとは。おかげで話しがややこしくなった」

「……あの子には昔助けられた恩があってな。恩返しをするつもりが、いつの間にか私はあの子を苦しめていたようだ」

真っ黒な毛皮におおわれた羊が問いかけると、対照的な毛皮の真っ白な羊は苦々しい表情でこたえる。

「お優しいことで。まぁ、お前があの少女の笑顔を奪ってたんだからな。当然といえば当然か。だったら、頼まれた時にあの少年を直接こっちに移動させれば良かったのに」

「……故意ではない。あの子の父が戻ってきたのも予想外であった。それと私は万能ではないのだ」

黒い羊の責めるような口調に、白い羊は苦々しい表情のまま言葉を返す。

「ふん……どうだか。ともかく、お前の目的は達成されたんだ。これ以上、人間達にかかわる必要はないな」

「達成されてはいない。私の過ちであの子を傷つけたなら、最後まで見守る義務がある」

真っ白な羊は語気を強くして、真っ黒な羊にそう言う。

「やれやれ、欠陥だらけの神様だねぇ。俺ならもっとスマートにやれたのによ」

真っ黒な羊は挑発的な笑みを浮かべて白い羊にそう言った。

「……こりないやつだ。また何かをするつもりならば容赦はしないぞ」

白い羊は、キッと睨めつけるような視線を黒い羊に向ける。

「おいおい、そんな怖い顔で見るな。俺も人間達と気の遠くなるくらいの時間を過ごしたんだ。そんな無駄な事はしないさ」

その鋭い視線をかわして、飄々とする黒い羊。白い羊もその言葉を聞いて安堵したのか、視線を別方向へとうつした。

「……人間になって思ったんだ。人間も悪くないってな」

「まさか、お前があの少年を助けるとは思わなかったが?」

「気まぐれさ。あとは……お前への嫌がらせってとこか」

「……性格は相変わらずだな。しかし、今回は感謝せねばならんな」

白い羊は一呼吸置いたあと、ゆっくりと次の言葉を紡ぎ出した。

「最後の最後で……あの子を本当の笑顔にさせられたのだから」