コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 俺と彼女の距離【9】 ( No.14 )
- 日時: 2013/05/07 22:03
- 名前: ゴマ猫 (ID: ugb3drlO)
翌日の昼休み。
前回の失敗をくり返さないためにも、さり気ない感じで誘うのが良いと思うんだ。
調査の結果、橘さんは学食派ではなくお弁当派らしい。
昼時はどこか1人で食べてるみたいだから、後をつければ……って言っても別に他意はない。
なんせ橘さんが笑顔になるか、ならないかに俺の運命がかかってるから。
とにかく、橘さんには色々聞きたい事があるんだ。
羊の事とか、羊の事とか、羊の事だ。
んで現在尾行中だったりする。
けしてやましい気持ちで尾行してる訳じゃないけど、後ろめたさを感じてしまう。
「橘さんどこまで行くんだろ?」
どんどんと階段を上ってこのまま行くと屋上コースだ。
うちの学校はいつでも屋上が開放されている。
他の学校だと、屋上は出入り禁止のとこも多いみたいだけど。
最上階まで着き、扉を開けて橘さんは屋上へ出た。
よし!! さり気ない感じで入って、一緒に昼飯を食べよう作戦スタートだ。
そう心の中で呟き、屋上の扉を開ける。
「あ、あぁー、た、たまには屋上で、た、食べるのも良いよなー」
棒読みして、しかも噛み噛み。
俺、役者とかにはなれないな。
いや、ならないけどさ。
「うひゃ!! さ、桜井君?」
橘さんの反応は、日だまりの中でくつろいでた小動物が、猛獣を見つけた時みたいな反応だ。
「あ、あれー橘さん。ぐ、偶然だねー。よ、良かったら一緒に昼飯食べない?」
もはや、さり気なさの欠片もないが仕方ない。
だって女の子を誘うの初めてだし。
「え、えっと、わ、私、よ、用事思い出しちゃった!!」
そう言って、橘さんはまたしてもフワフワショートカットの黒髪を揺らしながら、屋上から逃げるように出ていってしまった。
降り注ぐ暖かな日差しの中、俺は屋上に1人ポツンと残された。
俺もしかして嫌われてる?
それとも橘さんってめっちゃシャイなのかな?
後者だと信じたい。
その後、屋上で食べる弁当はややしょっぱい味がした。……ぐすん。