コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

俺と彼女の距離【11】 ( No.18 )
日時: 2013/05/10 22:12
名前: ゴマ猫 (ID: QXDbI9Wp)

翌日の昼休み。
俺は、昨日橘さんを見つけた屋上に来ていた。

なんとなくだが、ここに来れば会える気がしていたのもある。
屋上の扉をゆっくりと開けると、日だまりの中で佇む小柄の女の子を見つけた。

「橘さん」

「はわっ!! さ、桜井君?」

俺の姿を見るやいなや、ダッシュで逃げようとしたので、俺は真摯な態度で謝った。

「ま、待って!! この間から色々ゴメン。橘さんを怖がらせちゃって……」

俺の言葉を聞いて、橘さんの動きが止まる。

「その、嫌がらせとか、付きまとうとか、そんなんじゃないんだ……ただ、橘さんと話しがしたいだけで」

俺に背を向けていた橘さんは、恐る恐るこちらに振り返る。

「……え、えっと、私の方こそごめんなさい。桜井君が話しかけてくれてるのに逃げちゃって」

そう言って、橘さんは申し訳なさそうに謝った。

「いや、悪いのは俺の方だからさ。もし迷惑だったらそう言って」

橘さんが迷惑に思っているなら仕方ないと思う。
呪いは解けないかもしれないけど、人の気持ちを考えないで自分勝手になるよりは良いと思う。

「そ、そうじゃないの。私スッゴく人見知りで……と、とくに男の子に話しかけられるなんて初めてだったから……どうしていいかわからなくて……」

かなり小さい声で恥ずかしそうに話す橘さん。
よ、良かった。嫌われてなかった。
俺は心の中で安堵した。

「そうだったんだ」

「そ、それに、桜井君がここじゃ話せない話し……とか、大事な話しとか言うから……」

うっ……やっぱり誤解されてた。
自分で思うけど、うかつな発言が多いよな。

「それはそうじゃなくて、違う話しで、大事な話しである事は間違いないんだけど」

何て説明したら良いのかわからない。
あたふたする俺を見て、橘さんがクスッと笑った。

「桜井君って、おもしろい人なんだね」

「そ、そうかな?」

おもしろいと捉えてくれるのは嬉しいが、変人にランクアップしないように注意したいところだ。
だけどそんなやり取りのおかげか、橘さんの緊張はほぐれたみたいだ。

「それで、お話しって何かな?」

「えっと、笑わないで聞いてほしいんだけど」

俺が橘さんに羊の事を話そうとした瞬間、頭の中に鋭い痛みが走った。

「……っつ!!」

あまりの激痛でその場に倒れ込んでしまう。
まるで脳を鈍器でおもいきり叩かれてるようだ。

「ど、どうしたの? 大丈夫?」

橘さんは、心配そうに俺の顔を覗きこんでくる。

「…………」

返事をしなきゃと思ったけど声が出せず、俺の意識はゆっくりと闇の中に落ちていった。