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夢の中で【12】 ( No.19 )
日時: 2013/05/12 19:48
名前: ゴマ猫 (ID: S9l7KOjJ)

意識が落ちていく……深い海の底に沈むように。

太陽の光すら届かないような、そんな全てが真っ暗闇の空間にポツンとそいつは居た。

白い毛皮に身をまとった謎の羊。

周りが黒色に包まれた空間で、真っ白なその色は異質に感じた。

「お前に1つ、言い忘れた事がある」

真っ白な羊は俺に語りかける。

「あの子に私の事は言うな。今度お前が口を滑らした時は、その時点でお前の記憶は全てなくなる」

まるで録音された音声を強制的に聞かされているようだ。
こちらから問いかける事ができない。

「あの子は優しいからな。事情を話せばお前に同情し、笑顔を見せてくれるだろう。だが、それは本当の意味での笑顔ではない」

羊の言ってる事はわかる。
橘さんが同情して笑顔になっても意味のない事くらい。

だけど、どうしたら良いんだよ?

難解なミステリーの推理をノーヒントでやってる気分だ。

「それと、2ヶ月目に入ると人物の記憶も消えていく。お前に縁遠い人物から順にな」

それは、想像もつかないけど怖い気がした。
あとどれくらいもつのだろう?

「今回は私が言い忘れた責任もあるので、不問にしてやろう」

そう言うと、羊は暗闇の中に消えていった。
同時に俺の意識が急速に浮上する。

俺は本当に呪いを解けるのだろうか……?
あまり深く考えないようにしていたが、事態は良い方向ではない気がした。