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羊との遭遇【2】 ( No.2 )
日時: 2013/05/01 21:44
名前: ゴマ猫 (ID: QXDbI9Wp)

裏手にまわると、暗闇の中にうっすらと青白く光るものが見えた。

「…………」

ま、まさか俺、見てはいけないもん見ちゃった?

こういう時はどうすれば良いんだっけ?
やっぱり警察に通報か?
でも、青白い光を見ましたなんて言ったって信用されなそうだしな……。

あたふたしていると、光は一瞬だけ瞬いて消えてしまった。

「き、消えた……」

うーん、不思議な事もあるもんだ。
携帯でムービー撮っておけば良かったかな。
そんな事を考えながら、神社の入り口付近に戻るため歩いていると、柔らかな感触が足元から伝わった。


——グニャッ——

ん……?
何だ? この柔らかな感触は?
ゆっくりと視線を足元にやると、そこには白くモフモフした物体があった。

「……なにコレ?」

モフモフの物体から、足をどかして、手で触ってみる。

「……や、柔らか!! クセになりそうだな」

感触はウールって感じか。
抱き枕より少し大きいくらいのサイズで、俺にはジャストサイズだ。

モフモフ……気持ち良いな。
しばらくモフモフを堪能していると、どこからか声が聞こえてきた。

「……おい、お前。無礼であろう?」

「へっ?」

周りを見渡してみるが、人の気配はない。
神社に居るのは、俺だけ。

「空耳かな?」

しかし、またしてもどこからか声が聞こえてきた。

「聞こえないのか? 私から離れろ」

「……まただ。幻聴が聞こえるなんて、疲れているのかな……」

眠りが足りなかったんだろうか?
ちゃんと10時間は寝てるのに。(昼寝はのぞくけど)
そんな事を考えていると、地面のモフモフが急に動きだした。

「なんだ、なんだ?」

上に乗っていた俺をはじき飛ばして、モフモフは宙に浮く。
よく見ると……動物?
その姿は羊そのものだった。

「無礼なやつめ。私の上に乗るとは……」

「…………」

低音のボイスで、仰々しく話す羊。
なんですかこれ?
羊が喋ってますよ。

「えーっと……うん。これは夢だ。そうに違いない」

さっきの青白い光も、この喋る羊も、全部夢に違いない。
なーんだ、焦って損しちゃったよ俺。

「……お前。聞いてるのか?」

相変わらず夢の羊は、低音ボイスで俺に話しかける。

「あぁ、聞いてる、聞いてる。けど、いくら夢の中でも神社で眠りたくないんだよ」

寝るのが好きって言っても、外では寝ない。
たとえ夢の中であろうと、自宅の布団で寝るのが美学ってもんだよ。

「……どうやら、反省していないようだな」

「わかった、わかった。とりあえず俺は家に帰って寝るから……って言っても夢の中なんだけど」

「いいだろう。お前には、罰を与えねばならんな」

夢の羊は、まるで神様かなんかの話し方だ。
真っ直ぐ俺を見据えている。

「まぁ、なんでも良いけど俺は帰るよ」

そう言って俺は夢の羊に背を向けて、帰路についたのだった。