コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

夢の中で【14】 ( No.21 )
日時: 2013/05/16 19:04
名前: ゴマ猫 (ID: tHinR.B0)

授業中であるためか、保健室はとても静かだ。
いつも思ってたけど、ここは独特の匂いがする。
葉田は「良くなったら戻ってこい」とだけ言って教室へ帰った。

そこへ保健の先生を連れた、橘さんがやってきた。

「さ、桜井君。もう大丈夫なの?」

「うん。なんか心配かけちゃってごめん」

橘さんは息をきらせていて、かなり急いできたのがわかる。

「よ、良かったぁ……突然倒れちゃうからびっくりしちゃった」

そう言うと、橘さんはふぅっと安堵の息をもらしていた。

「ふむ……一応、熱を計っておくか」

そう言って俺に体温計を渡してきたのは、白衣に身をまとった、切れ長の目に長身でクールな顔立ちが特徴的な女の先生だ。

しばらくすると電子音が鳴り、表示を見てみる。

「平熱か」

まぁ、それはそうだろう。
体調が悪かった訳じゃないし。

「なら、貧血かもしれないな。桜井、ちゃんと食事はとっているのか?」

「えぇ。ちゃんと食べてます」

家族のルールである『必ず家族一緒に夕飯を食べる』があるためか、基本的に外食やインスタント系のものは食べない。
うーん、よく考えてみたら健康的だよな。
俺、いっぱい寝るし。(それはむしろ趣味に近いけど)

「ふーむ、特に問題ないようならとりあえずは大丈夫か。ただ、病院には行っておくと良いと思うぞ」

そう言うと、先生は足早に保健室を後にした。
「ちゃんと寝てるのか?」って聞かれないあたりに、俺の寝坊助ぶりが周知の事実っぽくて嫌になるよな。

「先生、なんか別の用があったみたいだけど、緊急だって言って来てもらったんだ。あっ、でも桜井君はまだ寝てなきゃダメだよ」

橘さんは教室に戻ろうとした俺をやんわりと止める。
倒れてしまった手前、断りにくいのでベッドに戻る。
別に寝たかった訳じゃない……と思う。

「いや、本当ごめん」

俺が謝ると、橘さんは優しく微笑んだ。

「謝る事ないよ。それにこういう時は、ありがとうって言ってくれた方が嬉しいよ?」

「あ、……ありがとう」

俺が若干はにかみながら言うと、橘さんは「良くできました」と言って嬉しそうだった。
なんか俺年下みたいだな……同級生なのに。

「そういえば、橘さん授業戻らなくて大丈夫なの?」

俺が尋ねると、橘さんはすごい勢いで慌てる。

「はわっ!! すっかり授業の事忘れてた!! じ、じゃあ、桜井君終わったらまた見にくるね」

そう言って、橘さんは小動物が大急ぎで巣穴に戻るように出ていった。

うーん、ちょっと天然なのかな?
でも、見てると心が穏やかになってしまう。
そんな事を考えていたら、羊が出てきた悪夢なんて忘れてしまっていた。

あれ? 俺、橘さんと普通に話せてるじゃん。