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葉田の憂鬱【番外編】 ( No.26 )
日時: 2013/05/27 00:07
名前: ゴマ猫 (ID: S9l7KOjJ)

ある日の放課後。

「葉田ーっ!! ボールいったぞー!!」

「よし。ここだ」

ゴールネットを揺らし、あざやかに決まったシュートは気持ちがいい。

「よーし、今日はここまでだ!!」

部長の声で今日の練習が終わる。
1年の俺がレギュラーになれるかどうかは、練習や紅白戦でのアピールにかかっている。
ここで気を抜く訳にはいかない。

「調子良いな、葉田。この分ならレギュラーは間違いないな」

「いえ、まだまだです。お先に失礼します」

部長はそう言うが、本当にまだまだだ。
まだ俺は完璧じゃない。

「おい、葉田。今日、一緒に飯行かないか?」

同級生で同じバスケ部の、三山に声をかけられる。

「悪い。自主練したいんだ」

「お前、ストイックだよな〜。たまには付き合えよ」

「今度な」

そう言って、体育館を出た。
今から練習できる時間はたかが知れているが、この積み重ねが後で物を言うのだ。

校門を出てしばらく歩いていると、見知った人物を見つけた。

「桜井」

「おぉっ、葉田」

桜井 洋一 俺の友人だ。
高校に入ってから仲良くなった……と言えるかはわからないが、あまり話すのが好きではない俺が唯一よく話す相手でもある。

「部活、今終わったのか?」

「あぁ。桜井はこんな時間まで何してたんだ?」

そう尋ねると、桜井は苦笑いになる。

「ははは……いやぁ、うっかり今まで教室で寝てたら、先生に怒られちゃってさ。お前は学校に何しに来てるんだ? って」

「やれやれ。その癖と言っていいかわからないが、眠り癖はなんとかならないのか?」

桜井は授業中でも寝てる事が多い。
結果、よく怒られる。

「これでも大分マシになったんだけどな〜。中学の時はもっと寝てたし」

「桜井の中学時代を聞くのが怖いな……」

今以上に寝てて、授業とかついていけてたんだろうか?
そんな疑問が浮かんだ。

「はははっ、趣味みたいなもんだからな」

「桜井、寝るのは趣味とは言わないぞ?」

「そうなのか? んー、じゃあ俺の趣味ってなんだろう……」

真剣に悩みだしてしまった桜井。
寝るのを趣味と言えるのは、ある意味凄い。

「桜井。スポーツとかやらないのか?」

「スポーツ? 無理無理。俺、運動得意じゃないしな。早寝選手権とか競技があったらやるけど」

「それはシュールな競技だな……これからバスケの自主練やるんだが、良かったら付き合わないか?」

「バ、バスケか? でも、もうリング見えなくなるんじゃないか?」

桜井に言われて空を見上げると、茜色の空に夜のとばりが落ちようとしていた。
少しゆっくり話しすぎたようだ。

「まぁ、暗くても練習はできるが、今日は帰るとするか」

「おう。また誘ってくれよ」

そう言って、俺は自宅へ帰るため桜井と別れた。
桜井と話してると、つい饒舌になっている自分がいる。
不思議な奴だな。
でもまぁ、人の事は言えないか。

そんな事を考えながら、小さく笑ってみる。
その後、今日の自主練は軽い走り込みをするだけにした。