コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

羊との遭遇【3】 ( No.3 )
日時: 2013/05/01 23:47
名前: ゴマ猫 (ID: vysrM5Zy)

新生活が始まって、早くも1ヶ月が過ぎた。
相変わらず頻繁に眠りたくなってしまうけど、そこはブラックガムやブラック珈琲で我慢している。

新しい友達もできたし、何もかも順調!! のはずだったんだけど……。

「おい、桜井。今日提出するレポート持ってきてないのか?」

不意に、友人の葉田に問いかけられる。
葉田流星(はた りゅうせい) 高校に入って一番最初に仲良くなった。
普段はクールな奴だけど、実はとっても思いやりがある奴だ。

「えっ? 提出するレポートなんてあったっけ?」

「おいおい……先週言われてたじゃないか」

葉田は呆れ顔で肩をすくめる。
まったく記憶にない。
授業中にうつらうつらしてたんだろうか?

「……記憶にないなぁ」

「やれやれ……また、うたた寝でもしてたんじゃないか?」

結局その日は、次回までに提出するって事でお咎めなしだったけど、最近は物忘れが激しいんだ。

ある時は、弁当を忘れてお昼抜き、またある時は、教室の掃除をし忘れて怒られた。
細かい事なんだけど、覚えてないんだ。
まるで、記憶からすっぽり抜け落ちたかのように。

「ただいまー」

今日も1日が終わり帰宅。
これから楽しい睡眠時間……って思ってたら、妹の 杏(あんず)に睨まれた。
桜井 杏 妹って言っても、年齢は同じだ。
俺の方が何時間か早く生まれたってだけで、兄って事になってる。
俺の性格のせいか、全然敬われてはいない。

「……ただいま」

「洋一、夕飯の材料は?」

「えっ? そんなの頼まれてたっけ?」

俺がそう言うと、杏は深いため息をつく。

「はぁ……やっぱり忘れたんだ。もういいや私買ってくる」

杏はそう言うと、パタパタと玄関を出て買い物に行ってしまった。

「……おかしいな。まったく記憶にないぞ」

そう呟きながら何気なくポケットに手を入れると、1枚のメモが入っていた。

「……にんじん、玉ねぎ……」

どうやら買ってくる物のリストらしい。
しかし、このメモにすら書いた記憶がない。
俺は胸の中で、一抹の不安を感じたのだった。