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幼い頃の記憶【橘 菜々編】 ( No.35 )
日時: 2013/06/09 13:03
名前: ゴマ猫 (ID: 7ZYwzC8K)


夜。
私は、2人の大きな声で目を覚ました。

「何で、あなたはいつもそうなんですか!!」

「仕方ないだろう。こっちは仕事で忙しいんだ。それに、菜々の事はお前に任せてるんだし」

部屋のドアを開けて、リビングを覗いてみると、お父さんとお母さんがケンカをしていた。
2階建てのアパートの一室。
けして大きな家じゃないけど、家族3人で仲良く暮らしていたのに、いつの頃からか、お父さんとお母さんは顔をあわせればケンカするようになっていた。

「少しは、私の事も考えて下さい!!」

「帰ったら聞くから」

そう一言だけ言うと、お父さんはリビングを出ていって、玄関の扉を開ける音が聞こえた。

子供ながらに感じていた疑問。
どうしてお父さんと、お母さんはいつもケンカしているのだろう?
私はなんとか仲直りしてほしくて、リビングにいき、お母さんに尋ねてみる。

「ねぇ、お母さん。どうしてお父さんとケンカばかりしているの? ケンカはダメだよ」

「起きちゃったのね……菜々。お父さんはね、いつもお仕事ばかりで、私達の事なんて何も考えていないのよ」

お母さんは、苦い表情でそんな事を言ってくる。
意味がよくわからなかった私は問いかける。

「どういう事?」

「お母さんや、菜々の事はどうでもいいって事よ。好きじゃないんだって」

信じられなかった。
お父さんが私やお母さんの事を好きじゃないなんて。

「そんなのウソだよ!!」

お父さんが大好きだった私は、お母さんがウソ言っているんだと思い、語気が強くなってしまう。
悲しみにみちた表情で、私を見つめてくるお母さん。
その表情を見た私は、やり場のない気持ちになり、気がつくと家を飛び出していた。

「……はぁ、はぁ」

どれくらい走っただろうか?
お母さんの制止する声も聞かず、着の身着のまま家から走ってきた。

周りを見渡すと、見なれない神社があった。
長い石段の上にある神社。
まるで何かに導かれるように私は石段をのぼる。