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彼女の場合【橘 菜々編】 ( No.39 )
日時: 2013/06/13 21:24
名前: ゴマ猫 (ID: tHinR.B0)


瞼に光りを感じて、目が覚める。ベッドから体を起こして、壁掛け時計に目をやると、いつもよりまだ少し早い時間だった。

「またあの夢……か」

最近、小さい頃の夢をよく見る気がする。
頬をつたう涙のあとに気づき、小さくため息をついた。
前住んでいた所から、少し離れた今の場所に引っ越してきて、もうかなり経つ。高層マンションの一室で、お母さんと私の2人で住むには広すぎるくらいだ。

高校に入学して、もう1ヶ月。
話せる友達はできたけど、結構1人になりたかったりして、お昼休みは屋上に行って昼食をとるのが日課になってたりする。

「……っと、もうこんな時間」

ボーっとしていたら、そろそろ準備しないと間に合わない時刻になっていた。
朝の時間って、2倍速ぐらいで時計が進んでいる気がするのは私だけかな?

急いで準備をして、家を出る。昨日の夜にお弁当の用意をしていたので、今朝は楽だ。
お母さんは私より先に仕事に出たらしい。
簡潔なメモがリビングの机の上に置かれていた。

——放課後。

全ての授業が終わり、今日は部活もないのでサッと帰ろうと思っていると、後ろからかなり大きな声がかかった。

「橘さん!!」

「ひゃうっ!! な、何か用ですか?」

振り返るとそこには、同じクラスの男子、桜井君が居た。突然だった事と、あまり接点がない桜井君に話しかけられて変な声を出してしまう。

「うん。橘さんに話したい事があって。でもここじゃちょっと話しづらい事なんだ」

——へっ?
桜井君の真剣な表情と、ここじゃ話しづらい話しと言うと……。
想像した瞬間、顔が赤くなるのが自分でもわかった。

「あ、あの、わ、私、いきなりそういうのは……ごめんなさい〜!!」

それだけ言い残して、私は教室を飛び出した。
途中、桜井君が大事な話しがあるとか言ってたけど、それどころじゃない。

「はぁ、はぁ」

昇降口の所まで全力ダッシュしたせいで、息はかなりみだれていた。
ゆっくりと深呼吸をして息を整える。

「……やっぱり、告白……だったのかな」

そんな事をひとり呟いてみる。
自分で言うのもなんだけど、恋愛には奥手な方だと思う。
もちろん、告白なんてされた事ないし、男子と仲良く話した事もない。
桜井君とは接点ないし、冷静に考えると、やっぱりそれは考えにくいよね。
——って事はもしかして私の勘違いだった!? だとしたら、すっっごく恥ずかしい。

「でも、勘違いじゃなかったら……」

その後、モヤモヤした気持ちのまま、私は帰路についた。