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彼女の場合3【橘 菜々編】 ( No.47 )
日時: 2013/06/20 22:07
名前: ゴマ猫 (ID: diC/OxdM)


翌日の昼休み。
よっちゃんに、『今日は3人でお昼しよ』と誘われたけど、曖昧な笑みを浮かべて逃げてきてしまった。
昨日の今日で、すぐ実行なんて無理だよ。

そして今はひとり屋上のベンチに座って、自前のお弁当を食べている。
桜井君にも謝ろうと思っていたんだけど、やっぱりなんだか恥ずかしくて、今日は目も合わせられていなかった。

「……うん。やっぱりちゃんと謝ろう!!」

箸をギュッと握りしめ、決意をあらたにする。
その時、後ろから声がかかった。

「橘さん」

「はわっ!! さ、桜井君?」

声の主は、桜井君。
またも不意打ちで、変な声が出てしまった。
いきなり過ぎて、心の準備ができてない。
自分のタイミングじゃないと無理だよ!! わたわたしながらも、反射的に駆け出していた。

「ま、待って!! この間から色々ゴメン。橘さんを怖がらせちゃって……」

その瞬間、桜井君の真面目な声が私の足を止めた。

「その、嫌がらせとか、付きまとうとか、そんなんじゃないんだ……ただ、橘さんと話しがしたいだけで」

桜井君は、凄く申し訳なそうにそんな事を言った。謝らなくちゃいけないのは私の方なのに。
私は、恐る恐る振り返り、今までの事を謝る。

「……え、えっと、私の方こそごめんなさい。桜井君が話しかけてくれてるのに逃げちゃって」

「いや、悪いのは俺の方だからさ。もし迷惑だったらそう言って」

なんか誤解されちゃってる。
でも、あんな露骨に避けてたらそう思われても仕方ないよね。
ちゃんと誤解を解かないと。

「そ、そうじゃないの。私スッゴく人見知りで……と、とくに男の子に話しかけられるなんて初めてだったから……どうしていいかわからなくて……」

「そうだったんだ」

私がそう言うと、桜井君は今までの不安な表情から、安堵の表情に変わった。

「そ、それに、桜井君がここじゃ話せない話し……とか、大事な話しとか言うから……」

これは大事な事だ。
逃げまわった理由の大半がこれだし。私がそう言うと、桜井君はかなり慌てて、身ぶり手ぶりをまじえながら説明をしてきた。

「それはそうじゃなくて、違う話しで、大事な話しである事は間違いないんだけど」

その様子がなんだか可愛いと思ってしまい、クスッと笑ってしまう。
一体どんな話しをするのかわからないけど、少なくとも私の考えてる事じゃなそうだ。

「桜井君って、おもしろい人なんだね」

「そ、そうかな?」

桜井君は、頬をかきながら恥ずかしそうだった。

「それで、お話しって何かな?」

仕切り直して、本題を尋ねてみる。
すると桜井君は、私が座っているベンチの横にゆっくりと座った。

「えっと、笑わないで聞いてほしいんだけど」

「……っつ!!」

真剣な表情から、一転、苦痛に顔をゆがめる桜井君。
そのまま、地面に倒れ込んでしまう。

「ど、どうしたの? 大丈夫?」

問いかけるが、桜井君は反応しない。

「と、とにかく、誰かに来てもらわなきゃ!!」

ひとりでは保健室に運ぶ事もできない。焦る私は、助けを呼ぶため教室へと急いだ。