コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

デート【22】 ( No.50 )
日時: 2013/06/24 22:05
名前: ゴマ猫 (ID: diC/OxdM)


「なんだよこれ?」

俺は訝しげな表情で、杏を見つめながら尋ねる。

「見てわからない? 最近流行ってるスポットを特集した記事だよ」

杏がペラペラと情報誌をめくっていくと、国内最大の観覧車だとか、夜景が綺麗な展望台だとか、海が見えるレストランだとか、およそ俺には縁のない場所の特集記事が何ページにもわたって書いてある。

「それはわかったけど、これを見せてどうしろと言うんだ?」

「だーから、この間言ってた気になってる人と、行けばいいじゃない。仲直りしたいんでしょ?」

杏は呆れはてたと言わんばかりの表情で、ため息まじりにそんな事を言う。
気になる人て……まぁ、間違いではないけどさ。

「おい、杏。こーいう場所は結構お高いんじゃないか?」

記事を見ると、小さい文字で入場料やら、料理の値段が書かれている。その金額は、高校生の俺には結構厳しい値段だった。

「はぁ〜、情けないなぁ。じゃあ……」

杏はさらにページをめくっていく。やがて、その手が止まる。

「ここ、良いんじゃない?」

「どれどれ」

そのページを覗き込むと、『夏を先取り!! ホラー特集!!』っといういかにも怪しい記事があった。

「ここの、最近有名な廃屋ってとこ良いんじゃない?」

「…………」

杏は何の気なしに言ってるんだろうけど、初デートで廃屋に誘うやつってどうなのよ? 間違いなく引くと思うんだけど。

「いや、これはないだろう。絶対引くって」

「よく見なさいよ。廃屋っていっても、本当の廃屋じゃなくて、ホラーハウス」

よく見ると、確かにホラーハウスと書いてある。記事によると、県内にあるテーマパーク内に、新しくオープンする予定らしい。
そのテーマが、先ほど言っていた『廃屋』という訳だ。

「なるほど。……だけど、ホラー系って嫌がるんじゃないか?」

「バカ。ここだけ行くわけないじゃん。このテーマパーク内にあるんだから、盛り上がってきた時に行くの」

——そうか。テーマパーク自体は、入場料もそれほど高額ではないし、2人分のチケットくらいなら頑張ればなんとかなる。

「……誘ってみようかな」

忘れていた訳ではないが、俺の呪いを解くためには橘さんを本当の意味で笑顔にしなければならない。(これがどういう意味なのか、正解はわからない)
他に方法が見つからないため、これができればそれにこした事はないと思う。ただ、橘さんを騙すような事はしたくないし、俺自身も純粋に喜んでほしいと思うので、打算的な事は考えていない。

「おぉ、やっとやる気になった。当たって砕けろだ」

杏は俺の背中をバンバンと叩いた後、満足気に部屋を出て行った。
——それにしても、女の子を誘うなんて、ちょっと前の自分じゃ考えれなかったな。

その後、杏の乱入によって、『明日の小テストの勉強』という重大な事を忘れているのに気づくのは翌朝だった。