コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

デート【24】 ( No.55 )
日時: 2013/06/29 01:29
名前: ゴマ猫 (ID: 9cJ6xZl9)


本当は放課後に言おうと思っていたけど、これはもしかしたら、今がデートに誘うチャンスかもしれない。そう思った俺は、話しを切り出す。

「あぁ、ちょっと昼飯食いっぱぐれちゃってね。それより、橘さん!! 話しがあるんだ!!」

「は、はいぃ!!」

俺が真剣な表情で話しかけると、橘さんは目を丸くして驚き、少しうわずった声を出して、綺麗な気をつけの状態になる。

「こ、今度の日曜日とか、予定あるかな?」

「こ、今度の日曜日? と、とくに予定はないけど?」

俺の緊張が伝わってしまったのか、橘さんも少し緊張してるようだ。

「もし良かったらなんだけど……日曜日に俺と遊びに行かない?」

「へっ!? そ、それは、ふ、2人でって事かな?」

橘さんは頬を朱色に染めて、そう尋ねてくる。
ここまで言ってなんだけど、すっげー恥ずかしい。これで断られたら、今日は立ち直れないかもしれない。

「……そういう事になるね」

ハッキリ、「そうだね」と言えない自分が情けない。
橘さんは少し考えた後、俯きながらも、首をブンブンと縦に振り。

「……い、いいよ。……う、うん。い、行こう」

と言ってくれた。
その瞬間、安堵感と高揚感が入り混じった気持ちになる。

「じ、じゃあ!! 日曜日にね!!」

橘さんはそれだけ言うと、急いで教室へと駆け出していってしまった。

「……ま、まだ詳しい内容とか言ってないんだけどな」

その場にポツンと残された俺。なんだが前にもこんな事あった気も——まぁいいか。
どうせ同じクラスだし、明日も学校あるんだし、後で詳しい事を伝えておこう。


————

その日の夜、夕食が終わった後、自室に戻ると、メモ帳とカレンダーに、日曜日の予定を書き込む。
帰って来る前にも、簡易的なメモに忘れないように書いていたが、念には念を入れておく。

「——よしっと、これで忘れても忘れないな」

目立つ赤で書いたカレンダーの『橘さんと日曜日デート』の文字に思わず顔が緩んでしまう。

「やっぱり、にやけるよな〜」

「キモッ。なにひとりでニヤニヤしてるの」

その声で我に返り、振り向くと、そこには妹の杏が居た。

「な、杏!? お、お前部屋に入る時はノックしろよ」

独り言を言ってたのを聞かれていたら、めちゃくちゃ恥ずかしい。ってか、扉は閉めていたはずなのに音もさせず、どうやって入ってきたんだ?

「さっきから、何回もノックしてたよ。返事がないから開けて入ったの」

「……そ、そうか。それで何か用なのか?」

気づかないほど、思考の世界に入ってたって事か。俺は気を取り直して杏に尋ねる。

「——ふーん。まぁ、もう大体わかったからいいや。日曜日頑張ってきてよ」

「な、なんでその事を!?」

「カレンダーに、でかでかと書いてあればわかるから」

カレンダーを指差して、興味なさげな表情をする杏。
しまった……家族に知られたくない情報が、だだ漏れじゃないか。うろたえる俺を見て杏は小さく笑った。

「最近、洋一少し変わったよね。前は無気力の寝坊助だったけど」

「そ、そうか?」

自分で変わったという、実感がない俺は杏の一言に驚いてしまう。

「——まっ、今の洋一なら上手くいくんじゃない」

杏はそう言い残して、俺の部屋を出ていった。

上手くいく……か。
日曜日は楽しみだな。