コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

デート【25】 ( No.60 )
日時: 2013/06/30 23:05
名前: ゴマ猫 (ID: diC/OxdM)


快晴——とまではいかないが、天気が良くてよかった。初デートが雨だったら嫌だもんな。
デート当日の日曜日、俺は、はやる気持ちを抑えながら待ち合わせ場所の駅前に向かっていた。

午前9時に待ち合わせしているが、現在の時刻は8時半——待ち合わせの時間までには、まだ早いけど、待たせるよりはいいだろう。いつもより入念な忘れ物チェックをおこない、もしものための薬も持ってきた。(酔い止めとか、頭痛薬とか、胃腸薬とかね)

やがて駅前に着くと、見慣れた姿が。小柄で、ふわふわのショートカットの綺麗な黒髪が目に入る。
——あれ? 橘さんもう来てるよ。

「橘さん」

「わぁ!! ……あ、さ、桜井君。お、おはよ」

橘さんは俺が声をかけると、一瞬驚いた表情になり、恥ずかしそうに俯いてしまう。

「うん、おはよう。にしても早いね。もしかして待たせちゃった?」

かなり早く来たつもりだったけど、デートの時の待ち合わせ時間とかって30分以上前に来るもんなんだろうか? 

「ううん!! わ、私も今来たところで、その、全然待ってない」

橘さんは、そう言って首を横に振るが、本当は結構待ってた気がする。

「ごめん。今度は、もう少し早く来るよ」

「い、いいよー!! そ、そんなに早く来たら……私が大変だもん……」

最後の方はよく聞き取れなかったけど、橘さんは気にしてないようだし、俺も気にしない事にしよう。

「とりあえず行こうか?」

「……あっ、あの」

「うん?」

橘さんは何かを言いたそうに、もじもじする。どうしたんだ?

「……き、今日の桜井君の服装かっこいいね」

「へっ?」

急にそんな事を言われて驚いてしまう。自分で言うのもなんだが、俺のセンスはかなり普通というか、地味なため、『かっこいい』など言われた事がない。
今日だって、七分袖の白いYシャツに、黒のジーンズという、かなりラフな格好だ。(何着てこうか散々迷ったあげく、着慣れてる服になったんだけど)

「あ、ありがとう」

「わ、私はどうかな? 変じゃない?」

橘さんは、くるりと回るようにして、自分の服を見せてくる。
上は、白のブラウスに、薄い紺色のカーディガンを合わせ、下は淡いピンク色のフリルスカートだ。
——正直言って、橘さんのイメージにピッタリって感じで、めちゃくちゃ似合ってる。
口に出して言うのはかなり恥ずかしいが……。

「すっごい似合ってるよ。普段、制服姿しか見てないから新鮮に感じたよ」

「——そ、そっかぁ。桜井君に褒められると嬉しいな」

そう言うと、橘さんは少し恥ずかしそうに、はにかんだ笑顔になる。何だが自分の顔が熱くなってきたのがわかったので、紛らわすために「そろそろ行こうか」と顔を背けて言った。

県内にあるテーマパークと言っても、かなり端っこの方にあるため、電車で2時間もかかる。……ちょっとした小旅行だ。
ようやく電車からおりた時には、もう行って遊んできたような感覚になっていた。

「やっと着いたね」

「うん。こんなに長い時間、電車に乗ったの初めてかも」

駅を出ると、見渡すかぎりの田園風景が広がっていた。——本当にこんな所にテーマパークなんてあるのか? と不安になってしまうくらいだ。というか、人来るんだろうか?

「やっぱり、広い場所じゃないと大きな施設は建てられないもんね。今から楽しみだよ」

橘さんは、無邪気な笑顔で俺に話しかける。
やっぱり良い子だな〜。同い年に『子』って表現は正しいかわからないけど、その言葉がしっくりくる。もし、杏あたりを連れてきたら、きっとブーブー言うに違いない。

「俺も楽しみだよ。えーっと……ここから目的地までは」

携帯のナビを見ながら、経路を探していると、とんでもない事実が発覚した。

「……ここから、バスで1時間だって」

俺達が向かう場所は、どうやら最果てらしい。